小林雅英、YouTuberトクサンが提案する2021年プロ野球の新しい“愉しみ方”

ベースボール・タイムズ

今春、『DAZN』にてスタートした『野球トレンド研究所』。人気野球YouTuberトクサンをMCに毎週、独自の視点でプロ野球を語り尽くす。この日は元ロッテの守護神・小林雅英氏(右)がゲスト出演した(新型コロナウイルスの感染防止に努め、撮影時のみマスクを外しました) 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

 2021年春、スポーツ専門の動画配信サービス『DAZN』にて、『野球トレンド研究所』(毎週月曜18時配信)がスタートした。人気野球YouTuberトクサンがメインMCを務め、選手への直撃インタビューや独自の視点でプロ野球の“今”に切り込む新番組。その制作の現場を訪れ、番組収録を終えたばかりのトクサン、そしてゲスト出演したNPB通算228セーブの“幕張の防波堤”小林雅英氏に、選手としての “こだわり”と今季のプロ野球の“愉しみ方”を聞いた。

近年稀に見るルーキー当たり年に思うこと

――収録、お疲れ様です。番組内でもお話をされていましたが、改めて今季のペナントレースにおいて、どのような点に注目していますか?

小林雅 まずは、ソフトバンクの日本一をどこが阻止するのかということですね。パ・リーグの球団が阻止するのか。それとも日本シリーズでセ・リーグの球団が阻止するのか。これだけ一つのチームが連続で日本一になっているのは、巨人のV9以来のこと。これまでのプロ野球の中で、今が歴史的な瞬間であって、それを目の当たりにしています。まずはその瞬間を見逃さずに見ておきたいということですね。選手個々の話で言えば、とにかく今年は優秀なルーキーが多くいます。投手で言ったら東北楽天の早川(隆久)君、広島の栗林(良吏)君、野手なら阪神の佐藤(輝明)君、横浜DeNAの牧(秀悟)君……。投手も野手も、両リーグともに、これだけ多くのルーキーが開幕から1軍の舞台で活躍するというのは久しぶりじゃないですかね。

トクサン そうですよね。本当、これだけ多くのルーキーに注目が集まるのは久々ですし、活きのいい2、3年目の選手も含めたら12球団すべてのチームに楽しみな若手が揃っている。数年後にはチームの主軸として、球界のスターになるような選手たちのスタート地点に立ち会えているということを考えると、イチ野球ファンとしてものすごく楽しいシーズンになりそうです。

――昨年から引き続きですが、今年もコロナ禍でのシーズンになります。

トクサン  そうですね。以前とは球場の雰囲気も変わりましたよね。トランペットが使えなくなって、大声を出しての応援ができなくなった。その代わり、これまで以上に音楽や音響を駆使して盛り上げていますが、やっぱりファンの人が作る生音とは雰囲気も熱量が違いますし、どうしても空虚な感じがしてしまう。入場者数が制限されているとはいえ、ファンが球場に入れる状況にはあるので、拍手やメガホンを使いながら、どのようにして球場全体に一体感を生み出すのか。各球団の応援スタイルに注目したいですし、期待したいですね。

小林雅 メジャーリーグでは鳴り物の応援は元々ないですが、その中でいろいろな応援アイテムがあったり、球場でオルガンを弾いたりして、独特の雰囲気を作り出していた。日本でもあれができない、これができないということではなく、新しい応援のスタイルを作っていって、これまでとはまた違った雰囲気になればいいかなと思います。選手は本当に、そういう雰囲気や応援というものに鼓舞されて、持っている以上の力を出すことができる。僕も現役時代、抑えをやらせてもらった中で、ものすごくファンの後押しを受けながらマウンドに上がっていましたから。

――その「抑え」ですが、今季は多くのチームで新たなストッパーが誕生した中でシーズンがスタートしています。日本で通算228セーブの元守護神として今季、注目したい抑え投手は?

小林雅 広島のルーキー、栗林君ですね。大学、社会人を経てのプロ入りなので、野球に対しての知識や経験、スキルを持っているとはいえ、プロ1年目の開幕から抑えを任されるのは、僕からしたら本当に信じられない。本当、大抜擢ですよ。問題は、救援に失敗した時にどうなるか。1回だけだったらいいですけど、2回連続で打たれたりした時に、そこをどうやって乗り越えていくか。それが守護神になるための大きなポイント。どんな抑え投手でも打たれることはありますから、そこですぐに諦めるのではなく、首脳陣の方には我慢強く、抑え役を任せてもらいたいですね。

――よく聞く投手の能力に「抑えの適正」がありますが、小林雅英さんが考える「抑えに必要なもの」は何でしょうか?

小林雅 一番はメンタルですよね。抑えの重圧に耐えられるかどうか。重圧に耐えられる思考になれるかどうかだと思います。現役時代、僕なんかは無責任だったんですよね(苦笑)。特に初めはそうでした。僕が「やりたい」と手を挙げて抑え役をやり始めた訳じゃなくて、「やれと言われたから」という感じだったので。「打たれても仕方ない」と思っていました。でも、そこから何度も抑えのマウンドに上がって、成功や失敗を繰り返した中で、だんだんと責任感が生まれていった。その責任感というものが重圧となって背負い過ぎてしまうのも良くない。そこの加減をうまく自分の中で整理できる投手が、守護神として長く活躍できるのかなと思います。なので、栗林君もこれからいろんな経験をして行く段階。焦ることなく見守っていきたいですね。

普段は聞けない「コアな話」に価値がある

名門・帝京高校で2002年夏の甲子園メンバーとなり、創価大では4年時に主将を務めた経歴を持つトクサン。2016年8月に開設した『トクサンTV』は現在、チャンネル登録者数60万人、最大月間1500万再生を誇る日本一の野球チャンネルとなっている 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

――栗林投手を始め、新たな球界のスター誕生への期待が高まっている中、今春からDAZNにて始まった『野球トレンド研究所』では、これまでにないプロ野球の楽しみ方、視点を提示しているのではないかと思います。実際に収録に参加された感想は?

小林雅 面白かったですね。すごく内容が濃くて、あっという間に時間が過ぎて、あっという間に収録が終わった感じです(笑)。『配Q』のコーナーなんか、あそこまで配球について語り合うことはなかったですから。もしあったとしても、エースと主力の対戦を解説をするケースが多いんですが、今回はほとんど見たことがない投手で……(苦笑)。

トクサン 球種のデータを渡されただけですもんね(苦笑)。

小林雅 そう。だから予想が外れました(苦笑)。でも外れるのが面白いし、こういう考えがあるという別の人の意見を聞けるのが面白い。僕自身も勉強になりましたよ。

――番組名が『野球トレンド研究所』。この名前に込められている意味は?

トクサン 今の日本において「野球」は欠かすことができないコンテンツになっていて、ファンとして「野球を見る視点」というものが大事になっていると思うんです。さっきの配球ひとつを取っても、その球を投げることになった理由や根拠が分からないと、「おい!打たれるなよ!」という単純な感情になってしまう。それはもったいないんじゃないか、と。「やっぱ、ここでこの球種だよな!」とか、「これはバッターが一枚上手だったな!」っていうのが分かった方が、より一層楽しむことができる。そういう野球の深さを知ることで、野球の見方はかなり変わってくると思います。そういう意味で、「野球の深み」というのは普遍のトレンドだと思いますし、今の野球界で起こっている最新の出来事を追いかけながらも、そういった“深さ”を提供する番組にしていきたいと思っています。

――ゲストに迎えるプロ野球OBの方たちとのコアなトークも必見ですよね?

トクサン そうですね。そうなんですけど、内容がコア過ぎるんですよね……(苦笑)。地上波じゃ絶対にやらないようなこともやるから。でも、OBの方々も、こちらがコアな角度で質問すると、コアな角度でしっかりと答えてくれる。地上波のスポーツニュースや新聞などでは、あまり聞けないようなことを聞けて、これまでにない情報を得ることができるのは、それだけですごく意味のあることかなと思っています。

――現役選手へのインタビューも実施して、あまり表に出て来ないような話、細かい技術的な話が盛り沢山の内容でした。

トクサン そうですね。やっぱりアマチュアであっても、ずっと野球をやってきた者からすると、その頂点に立つプロについて、疑問に感じること、興味のあることがたくさん出てくるんですよね。いろいろ聞いたことに答えてくれたり、その選手の考え方やこだわりを知ると、すごく親近感が湧く。普段はあまり聞けないような話をどんどん引き出せたらなと思います。

――現役選手にインタビューする際に心がけていることはありますか?

トクサン 基本的に、興味しかないんですよね。プロ野球の世界までのぼり詰めた選手の技術や思考は、僕自身には間違いなくないものなので。とにかく教えてもらいたいっていう気持ちで、疑問に思ったことはどんどん聞いていくようにしています。その中で、僭越(せんえつ)ながらなんとなく似通う部分があったりとか、全く逆で「そういう風に考えるんですね!」ということもあるから面白い。ずっと内野をやってきた人間なので、特にピッチャーとかキャッチャーの話を聞くと新鮮ですし、すごく勉強になりますね。

――番組内で選手たちが語っているような技術的な話は、現役選手同士でも話をしたりするんですか?

小林雅 いや〜、どうでしょうね。昔と今とではだいぶ変わってきましたが、僕の場合は企業秘密だと思っていたので……。だから今回の収録でも「よくいろいろと話してくれるなあ」って思って聞いてました(笑)。僕の場合、自分の技術とか考え方は、自分が努力して得た財産だと思っていましたから。だから僕が現役だった頃は、自分で盗むものだった。誰かに教えてもらって、その人を師と仰いでしまうと、その人を超えることが難しくなる。だから他のチームの選手と一緒に自主トレをすることもなかったですね。でも今の現役選手たちは、自分の技術や考え方をどんどんさらけ出して、それでも活躍する選手が多い。それを聞ける子供たち、中学生や高校生は、すごく得だと思いますね。

――ではもし、現役時代に「この選手の話を聞ける」「この選手に教えてもらえる」としたら、誰に話を聞きたいですか?

小林雅 誰でしょうね……。やっぱり、松井稼頭央ですね(笑)。(※4月12日配信の番組内で現役時代に苦手だった選手が西武・松井稼頭央だったことを明かす)。2003年のアテネ五輪アジア予選で一緒になってから仲良くなって、普段から話をしたり、一緒にご飯を食べに行ったりもしていたんですが、野球に関しての話はほとんどしなかったですから。それで対戦したら、やっぱり打たれたので、聞いておけば良かったかな、と……(苦笑)。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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