小林雅英、YouTuberトクサンが提案する2021年プロ野球の新しい“愉しみ方”

ベースボール・タイムズ

リセットの重要性と、スパイクへのこだわり

ロッテの守護神として通算228セーブを記録した“幕張の防波堤”小林雅英。2004年にアテネ五輪出場、2008年から2年間はMLB・インディアンスでもプレーした。現在は解説者、コメンテーターとして活動しながら社会人野球チームのコーチも務める 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

――今日の収録では、小林雅さんのルーティンの話を詳しくされていて「スコアボードを見ながらマウンドに向かって、キャッチャーが(自分に向かって)指を差した瞬間にスイッチが入って、周りの雑音が聞こえなくなる」とおっしゃっていました。そのルーティンはいつ頃完成したのですか?

小林雅 自然とそういう風になっていった感じですよ。何度も試合を重ねる中で、「こうした方が……」「こうやってからマウンドに上がった方が……」と、少しずつマイナーチェンジしながら、気が付いたら「いつもこうやっているよな」と自分の型が出来上がった感じです。

トクサン ルーティンって無理矢理に作るものじゃないですよね。いい結果が出た時の自分を振り返って気がつくということなんですよね。無理矢理作ると「あっ、あれやってない!」、「あっ、これもしなきゃ! やばいやばい!」ってなっちゃいますから(苦笑)。プロ野球選手にまでなると、そんな失敗をする人はいないでしょうけど、アマチュアだといますからね。

――マウンドに上がる時以外で、普段の生活の中で心がけていたことや、ルーティンみたいなものはありましたか?

小林雅 特別にいつも何かをすることはなかったですが、朝起きてからゲームまで、どうやって準備をしていくか、どうやって気持ちを作っていくかは意識していましたね。そして毎試合、抑えようが打たれようが、1日が終わったら全部リセットする。昨日抑えたから今日も抑えられるという保証はないですし、その逆もしかりです。1日が終わったらリセットして、その繰り返しがシーズンになる。そしてシーズンが終われば、そこでも全てリセットするという考え方でやっていました。例えばシーズン中に「去年の今頃は20セーブしてたよな……」と思ってしまってはダメ。打者もシーズン中に「去年の今頃は打率3割だったよな」とか「20本打ってたよな」と言ったりしていた選手は、そこから先、全くダメになっていましたから。1日1日、1年1年をリセットするということを積み重ねる。それがほぼ毎日試合があるプロの世界で長く活躍する秘訣かなと思います。

――番組では選手が使用している野球道具にも注目されていますが、小林雅さんがこだわっていた道具はありますか?

小林雅 僕はスパイクですね。ピッチャーは足元が一番大事なので、踵(かかと)の高さや、ソールの中に1枚スポンジをかますとか、いろいろと工夫していました。僕はアシックスさんにお世話になっていたので、オフには必ず(本社のある)神戸まで行って、足型を取って、右足と左足の甲の高さも調べて、特注のスパイクを作ってもらっていました。それを、3週間に1回ぐらいのペースで新しいものに交換していましたね。

トクサン 3週間に1回ですか!?

小林雅 はい。ちょっとでも靴の中で自分の足が遊ぶと気持ち悪かったんですよ。見た目はまっさらなんですけど、毎日履くと少しずつズレる。そうなったらメーカーに新しいスパイクをお願いして、サインを書き入れて送って、ショップとかに飾ってもらっていました。本当、ぜいたくなスパイクの使い方をしていました。

トクサン それだけ繊細だったということですね。

小林雅 はい。こう見えて(苦笑)。

トクサン スパイクの歯の本数なんかも、右と左で違ったりしていたんですか?

小林雅 本数は同じだったんですが、後ろの方の歯の位置を変えていました。普通は踵に1個、その内側に2個入っているんですけど、それを逆にして、踵に2個、その内側に1個という形に変えてもらって、その1個は邪魔になるんで削ってもらっていましたね。地面を1個よりも2個の歯でガツっと噛みたかったので。

トクサン へ〜! すごいですね!

純粋に楽しみながら、ファンとの橋渡しをしたい

コロナ禍が続く中、プロ野球の楽しみ方も多種多様なものになっている。スポーツ専門の動画配信サービス『DAZN』では、試合のライブ中継の他にも様々なコンテンツを配信。『野球トレンド研究所』は毎週月曜日18時配信で新たな野球の視点&楽しみ方を提示している 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

――いろいろとうかがって来ましたが、今年のプロ野球を考えた時、やはり「コロナ禍の中でのシーズン」という大きなテーマがあります。以前とは野球をする環境も見る環境も変わった中で、ファンとしてはどういう楽しみ方をすればいいのでしょうか?

トクサン 去年は開幕が遅れたり、試合数が少なくなったりして、いろいろと制限されたシーズンでした。でも今年は、何とか無事に開幕して通常通り143試合を行う予定ということなので、まずは純粋に、毎日野球の試合が行われている日常を楽しめばいいんだと思います。番組MCとしては、その流れの中で毎週月曜日の18時から配信される『野球トレンド研究所』を見ていただいて、コアな話を一緒に楽しんでもらえたらと思います。僕自身も純粋に、当たり前のように毎日、プロ野球を楽しみたいなと思います。

小林雅 そうですね。今までと違って、なかなか球場に足を運ぶ機会も少なくなると思います。だからこそ球場に行った1試合を大切にしてもらいたい。それに加えて、今は球場に行かなくても、いろいろな場所で、いろんな方法で野球を見ることができるようになった。暑さ、寒さも関係ないし、自宅だったらどれだけ酔っ払ってもそのまま寝ちゃえばいいんだから(笑)。そういう自分自身の空間を作って、自分なりの楽しみ方を見つけてもらえたらと思いますね。

――DAZNで『野球トレンド研究所』という番組が始まったこと、番組の価値というものはどのように感じていますか?

小林雅 普通のニュース番組とかだと、どうしても当たり障りのない質問に無難な答えを返して、当たり障りのない話で終わってしまうことが多い。でも、コアに野球をやってきた人がする質問はやっぱり違うな、と思いましたね。普段から常に野球のことを考えて、野球のことしか考えてない人たちというのは本当、“野球バカ”ですからね。

トクサン はい。ありがとうございます。“野球バカ”っていうのは間違いないです(笑)

小林雅 そういう野球熱のある人たちが、いろんな興味や疑問を持ってくれて、それを素直に現役選手やOBにぶつけてくれるのは、答える側としても楽しいですし、ありがたいことだと思います。選手たちのこだわりを掘り下げて、番組の中で取り上げてくれるのは、野球をあまり知らないファンの方にとっても面白いでしょうし、新しい発見があるんじゃないかなと思いますね。

――まだまだファンが知らないことがたくさんあるということですね。

小林雅 はい。少しの疑問でもいいので、どんどん聞いて、掘り下げてもらえたらと思います。そして番組を通じて、新しい野球の教科書みたいなものが出来上がればいいなと思いましたね。スランプに悩んでいる子供たちが、「あ、こういう風に考えたらいいんだ」と参考になるような映像を残せる気がする。迷った時に「なるほどね!」「こういう見方があるんだ!」と思えるような番組になってもらいたいですね。

トクサン 確かにそうですね。高校の部活の中での話題の1つになってくれたらいいですね。「あの選手はこう言ってたぞ!」って。やっぱり技術とか考え方とか、それを知っているのと知らないのとでは大きく違いますし、その考え方も1つじゃなくて、選手それぞれで違っていたりする。そういうものを番組の中でどんどん聞いて、ファンの方との橋渡しみたいな立ち位置になれたらいいですね。

(取材・構成:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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