連載:#BAYSTARS - 横浜DeNAベイスターズ連載企画 -

三浦大輔監督、船出への新春の誓い 新生ベイスターズでの“夢の続き”

村瀬秀信

何が何でも優勝したい

新監督として新しい年を迎えた三浦大輔監督が2021年に思いをはせ、語ってくれた 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

 2021年。新しい年、新しい監督、新しい時代。

 横浜DeNAベイスターズ新監督、三浦大輔。“いつか来る未来”と、この日が来るのを想像していた。2003年の山下大輔氏以来の生え抜き監督は、多くの中心選手の移籍によって空洞化してしまったベイスターズの希望であり、11年に親会社となって以来、DeNAが掲げてきた“継承と革新”を色濃く反映させる最大のプロジェクトだと言ってもいいだろう。
「大きな期待というものを感じています。監督に就任してから、町を歩いていても『がんばって』『頼むよ、監督』と声を掛けられることが非常に多くなりましたし、その度に、“やってやろう”と燃えたぎる気持ちがどんどん強くなってきています。実感はキャンプでユニホームを着てからでしょうけど、すでに頭の中で『ああしよう、こうしよう』と、野球のことばかり考えていますね」

 誰もが言葉には出さずとも、この4年間は監督への準備期間であることは明白だった。2016年の引退から2年間はチームの外に出て、MLB視察や人材交流など、違った視点から野球を学んだ。そして19年シーズンから1軍投手コーチ、20年シーズンはファーム監督と、ステップアップを踏んできた。

「監督は“夢の続き”ですよ。98年に優勝という最高の経験をさせてもらって……それからずっと『引退するまでにこの横浜でもう一度優勝したい』と投げてきましたからね。それもかなわないまま終わってしまいましたけど、引退して外から野球を見ている時も、コーチで戻ってからも、その気持ちはだんだん、大きくなっていったというか。“もう一度、優勝するために、ユニホームを着てハマスタに戻る”。その思いはずっと自分の中にあったと思います。今回、こうして監督として戻ってくることができた。今は何が何でも優勝したいですね」

課題は“得点力”、采配に固定観念は持たない

選手たちには「主力が抜けて弱くなった」と言われたくないと思ってほしい、と語る三浦監督。来シーズンもキャプテンを担う佐野(写真)らのさらなる奮起に期待がかかる 【(C)YDB】

 ふと思い出した。

 DeNAになった当初、当時の球団幹部から三浦大輔に関する2つの目標を聞いたことがある。ひとつは「横浜で引退試合を行うこと」。もうひとつは、「監督になる時までに、優勝できる戦力を作り渡すこと」。

 前者は2016年にこれ以上ない花道をつくり、果たすことができた。では後者はどうか。16年にCS、17年に日本シリーズへ進出するなど、チームは優勝を狙えるまでの戦力を作り得たが、あと一歩のところで優勝には届かず。昨年は主砲の筒香嘉智が、今年はロペス、石川雄洋、パットンらが退団。梶谷隆幸、井納翔一がFAで巨人に移籍するなど、精神的支柱とも言える主力・ベテラン選手がチームを去り、さらに、エース今永昇太は手術明け。ストッパー山崎康晃は調子が上がらないままシーズンを終えるなど不確定要素は大きく、バトンを渡された現在のチームは、大きな過渡期に差し掛かっているなかなかの逆境だ。

「2020年シーズンは優勝できると言われながら、最終的に4位で終わりました。そこから、さらに中心だった選手が抜けて、“ベイスターズは弱くなった”とは絶対に言われたくはないですよね。これは僕以上に選手が思ってほしいこと。FAで2人が抜けて『よし、俺がポジションを奪ってやる』という気持ちになっている選手がどれだけいるか。出てきてほしいですよ。もちろん、キャプテンの佐野(恵太)、ソトとオースティンあたりは主力ですし、大貫(晋一)や三嶋(一輝)など今季結果を残した選手もいます。僕自身も昨年、一昨年とチームの中で選手を見てきたので、戦力のベースというものはありますけど、まずはこれまでの固定観念を捨ててフラットに見ていきたい。調子が悪かった選手も、梶谷の抜けたセンターラインをどう作るかも、課題に挙げた“得点力を上げること”に関しても、選手個々の特徴と調子をコーチらとよく見極め、打順をどう組み合わせてチームをつなぎ合わせていけるかですね」

 投手出身の新監督ながら、チームの課題に“得点力”を掲げているのは、ホームランでしか点が取れないと言われたここ数年の課題でもある。今季は2割6分6厘とチーム打率が大幅に改善し、本塁打数とともにリーグトップを記録しながら、得点力は相変わらず3位と効率の悪さが目立つ。昨年三浦が指揮を執ったファームでは、犠打や盗塁を積極的に仕掛けたため「細かい野球が三浦野球の大方針か」と思わせるが、そこは明確に否定している。

「采配に“これをやる”という方針はありません。チーム打率が高いところは大きな武器なので、それをどう得点に結びつけるか。その時その時で、バントや盗塁などで手堅く点を取りに行くパターンもあれば、強行もする。『8番・ピッチャー』だってやらないとは言いません。采配に固定観念は持たず、柔軟に考えられるようにはしておきたいですね。重要なことは相手より1点でも多く得点を取るため、そしてホームベースを踏ませないために、どうやって選手たちをつなぎ合わせていくか。優勝した98年の野球は“つなぐ”という部分では理想ですけど、あのチームはがっちりと固定されたレギュラー個々の力によるものがものすごく強かった。今のチームはまたスタイルが違って、打てる選手がそろってきてはいるけど、それを得点に結びつけるためにはレギュラーだけではなく、いろいろな選手の力が必要になる。今までやってきた以上にチームとして結束をしなければならないでしょうね」

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著者プロフィール

1975年8月29日生まれ、神奈川県茅ケ崎市出身。プロ野球とエンターテイメントをテーマにさまざまな雑誌へ寄稿。幼少の頃からの大洋・横浜ファン。

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