連載:プロ野球日本シリーズ 熱戦の系譜

松本秀夫アナが伝えた日本シリーズ名勝負 「山井を代えた落合監督の決断力に脱帽」

前田恵
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フリーアナウンサーの松本秀夫さん。「ニッポン放送ショウアップナイター」の実況に興奮したスポナビユーザーも多いはず 【撮影:白石永(スリーライト)】

「ニッポン放送ショウアップナイター」の看板アナウンサーとして、幾多の試合の実況を担当。30年以上にわたって日本シリーズの激闘を伝えてきたフリーアナウンサーの松本秀夫さんに、自身が実況を担当した試合を中心に、印象に残っている日本シリーズの名勝負を聞いた。

放送席から見た、山井と岩瀬の“完全試合リレー”

――これまで実況を担当した日本シリーズで、最も印象に残っているのはどの試合ですか?

 2007年の中日対北海道日本ハム、第5戦(最終戦)です。中日先発の山井大介が8回までパーフェクトに抑えていたあの試合が、最も印象に残っています。

 解説は関根潤三さんでした。8回が終わったところでCM中に「関根さん、(山井を)代えますか?」「いや、代えないでしょう」なんてやりとりをしていたんです。ところが、9回のマウンドに山井の姿がない。山井が降りることがわかったとき、関根さんが「代えたか。落合(博満)は血の涙を流しているね」という言葉を発したんです。それだけ落合監督は苦しんだ末にこの決断を行った、ということを言いたかったと思うんですが、関根さんのこの言葉は震えを感じるくらい、心に刺さりました。

 ちなみに、僕はこのとき「山井のパーフェクトを止めたのは、なんと落合監督でした!」と実況しました。我ながらおもしろい言葉が口から出たものだと、後で思いました。

――この試合は山井と岩瀬仁紀の継投による完全試合となりましたが、采配には賛否両論が巻き起こりました。

 確かに当時、岩瀬は中日の絶対的な守護神でしたが、まさかこのタイミングで代えるとは思わなかったです。完全試合目前で1対0と僅差、しかも中日53年ぶりの日本一がかかった試合です。かなりの緊張感がありました。
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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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