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GIANTS with~巨人軍の知られざる舞台裏〜
巨人戦のチケットでつながるファンとの絆
1枚の紙片を“夢の切符”へと変える
シーズンも終盤に近づく中、徐々に客席にも熱気が戻ってきた
シーズンも終盤に近づく中、徐々に客席にも熱気が戻ってきた【写真は共同】

 たった1枚の細長い紙片だって、手にすれば途端にワクワクへと変わる。毎日の生活ではなかなか味わえない、3時間ほどの特別な体験が待っている。舞台は東京ドーム。戸惑いの春、手探りの夏を経て、客席にはだんだんと熱が戻ってきた。


 グラウンドで日々戦いを続ける巨人軍は、リーグ連覇をはっきり視界に捉えた。ファンは勝利に喜び、時として敗北にうなだれる。そんなスタンドの様子を見渡して思う。「いい顔だな」と。チケットを売ることすらできなくなった半年前を考えると、胸が熱くなるもの当然だった。

途切れさせてはいけない長い歴史のバトン

 球春到来から1カ月もたたないうちに、想定外の日々が始まった。新型コロナウイルスを誰もが身近な恐怖として認識し始めたころ。巨人は2月25日、オープン戦の無観客開催を発表した。同時にチケットの払い戻しも開始。巨人戦の興行を担う読売新聞東京本社・野球事業部の金沢悠さんも、チケット担当として業務に追われた。ほどなくして開幕も延期に。多忙なのはもちろん、精神的に堪えた日々だった。


「いつ開幕して、いつからお客様を入れていいのか分からずに、段階的に払い戻しをしていく。事前の売れ行きはかなり好調だったので、残念な思いもあって……。なかなか気持ち的にはしんどかったです」


 4月に政府から緊急事態宣言が発令され、在宅ワークに。チケットを売るという業務の主体を失い「今すぐ取り掛かれるものがない。何から手をつければいいんだろうと戸惑いはありました」。担当になって4年目。責任ある立場としてさまざまな課題を解決してきた自負はあったが、そのノウハウのどれもが通用しない事態だった。

金沢さんは新たな観戦スタイルをお客様に提案したいと「MASU SUITE」などの席をチームメンバーとともに企画した
金沢さんは新たな観戦スタイルをお客様に提案したいと「MASU SUITE」などの席をチームメンバーとともに企画した【撮影:竹内友尉】

 その年のチケット販売の企画は、ほぼ1年前から日程を組んで進む。今季も、目玉となる座席を用意していた。半個室空間でグループ観戦が楽しめる「MASU SUITE(マススイート)」を内野席後方に新たに設置。「枡席」をコンセプトにした新たな観戦スタイルの提案はどう受け止められるのか。「すごく楽しみなシーズン」という期待も奪われた。


 それでもいつか必ず、有観客の試合が戻ってくる。そう信じて環境を整えていくほかに道はなかった。まず取り掛かったのは、すでに年間のチケットが手元にあるシーズンシートオーナーへの対応。先の見えない不安は、販売者も契約者も同じだった。


 1試合ごとの一般チケットとは違い、年間を通して同じ席を購入してもらうシーズンシート。内外野の各所に設置され、年間200万円を超える席から20万円程度で手に入る席まで多種多様にある。法人企業を中心におよそ8000件の契約がある「チケット販売の根幹」。その歴史は、東京ドームが建つ前の後楽園球場の時代から続いてきた。


「もう50年以上、親子でシーズンシートを引き継いでくださっているオーナーの方もいらっしゃる。長い間ずっと応援してくださり、契約されているシートにも愛着を持たれている。その歴史のバトンをつないでいきたい」


 コロナで途切れさせるわけにはいかなかった。営業を担う70〜80人規模の専門組織「シーズンシートセンター」と連携し、来季への繰り越しや未開催分の払い戻しなど各契約者の意向に寄り添って対応した。直接訪問するわけにはいかず、手段は契約者専用サイトでの情報発信やメール、電話、手紙など多岐にわたった。そうやってあっという間に春が過ぎたころ、ようやく球界には開幕の機運が生まれていた。

小西亮(Full-Count)

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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