“居酒屋応援スタイル”の松木安太郎さん 「ふざけたロスタイム」は心の叫び
選手と同じように、解説者にもタイプがあり、視聴者にも好みがあるから、批判はあまり気にしないという松木さん 【スポーツナビ】
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ファン5・アンチ5くらいがちょうどいい
素晴らしい解説者がたくさんいるなかで、松木という名前を出していただいたのは、大変光栄です。嬉しいですねえ。
――松木さんの解説は視聴者の代弁と言いますか、“応援スタイル”と言われています。2位という結果からも分かるように、多くの方から支持されていますが、一方で、「あんなの、解説じゃない」という声を耳にすることもあるのでは?
もちろん、いっぱいありますよ(笑)。選手時代も、監督時代も、解説者になってからも、批判はたくさん受けています(笑)。ただ、僕は常々思っているんですけど、世の中、10人が10人、良いと言ったら、疑ったほうがいい。4人くらいは嘘をついているんじゃないかと。評価してくれるのは嬉しいですけど、アンチの人も必要。僕は5対5くらいがちょうどいいと思っているんです。
パスがうまい選手、ドリブルが優れた選手、守備力に長けた選手と、プレーヤーそれぞれに個性があるように、解説者にも、分析に優れた方、監督目線の方、選手目線の方、僕のような視聴者目線のタイプと、それぞれ個性がある。それに対して、視聴者の好みもいろいろあるでしょうから、批判は気にならないですね。まあ、僕も時間がたっぷりあれば、戦術的なこともじっくり話したいな、と思っているんですけどね(笑)。
――松木さんが解説の世界に足を踏み入れたのは、ヴェルディ川崎の監督を退任されて、すぐの頃ですか?
そうですね。95年かな? NHKのJリーグ中継が最初だったと思います。そのあと、Jリーグの解説をしながら、96年のアトランタ五輪や97年のフランス・ワールドカップ・アジア最終予選、98年のフランス・ワールドカップ、2002年の日韓ワールドカップの解説をやらせていただいて。こうして振り返ってみると、節目、節目で大事な試合を解説させてもらってきましたねえ。
――解説業を始めるうえで、影響を受けた方、参考にした方はいましたか?
いないですね。当時、スポーツの解説というのは野球がメインで、サッカーの解説はそこまで確立されていなかったですから。もちろん、子どもの頃にダイヤモンドサッカーで岡野俊一郎さん(故人)の解説を聞いていたので、サッカー解説がどんなものかはイメージしていましたけど、本当に手探りでした。そのときに思ったのが、サッカーの魅力をいかに伝えるか。当時はJリーグが誕生したばかりで、サッカーについて詳しい人が少なかったですから、こんなに素晴らしい競技があるんですよ、みなさんも楽しんでください、という気持ちがありました。それを、短い時間の中で表現できるかどうか。その姿勢は今も変わらないですね。
あと、解説のスタートがNHKでしたから、「万人に伝わるように」というのがベースにありました。当時、山本浩アナウンサーとコンビを組ませていただくことが多かったんですけど、トラさん(山本アナの愛称)から、「アナウンサーはこんな風に考えている」といったことを教えていただいたのを、自分なりに取り入れて方向性を作っていった。そんな感じです。
どの試合でも手に汗握ってもらえるように
日本代表戦の解説では、一緒に楽しむ、一緒に応援する、というスタンスを大事にしているという 【Getty Images】
僕自身、オリンピックを見ていて、「誰のことを言ってるんだろう?」「なんの話をしてるのかな?」と思うことがあったんです。その競技に詳しくないのに、専門用語とか、選手名を連発されると、見ていて入り込めない。そうすると、ストレスが溜まるんです。
でも、初めて見る競技でも、隣に詳しい人がいて、「あの髪の毛の長い選手は誰々で、こんな選手だよ」とか、「○番の選手はこんなプレーが得意だから、注目していたほうがいいよ」と教えてもらうと、途端にその世界に入っていけるじゃないですか。僕はその「隣にいる詳しい人」でいたいんです。肩肘張らず、視聴者と同じ目線でサッカーを見て、一緒に楽しめたらいいなと思っています。
――そうした考え方の延長線上に、今の“居酒屋のおじさんのような”応援スタイルの解説があるのでしょうか?
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