連載:生涯現役という生き方

武藤敬司、思いがけない熱狂を生む方法 好評だった小川vs.橋本の後のメイン

武藤敬司
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第2回

熱狂を生み出すには、本物と呼ばれるような基本をマスターした上で、時には期待を裏切ってみせることが大事と武藤は語る 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

 普通あまのじゃくというと、素直じゃない人間の代表格みたいに思われて、あまり良くは言われない。でもことプロレスの世界においては、あまのじゃくな性格が効を奏することもある。相手のレスラーや観客の裏をかくという作為が、思いがけない熱狂を生むことがあるからだ。
 どうしてそんなことを言い出すかというと、実は俺自身があまのじゃくな人間だから。正統派を期待されると反対側に行きたい。できたらいつも人を驚かせていたい。俺はどうもそういう性分なんだ。

 プロレスの試合って、これが正しいという正解がない。一番避けなくちゃいけない問題はマンネリというテーマなんだ。
 同じ相手と何度も対戦しながら、なおかつ観客を飽きさせないようにするセンスがないと一流のレスラーにはなれない。いつもと同じような内容で、お馴染みの試合というのは、やる方も観る方も刺激的ではない。そんな時に俺だったら、ちょっとだけ裏をかきたくなったりする。そこがいいスパイスになるんだよ。
 でもこの期待を裏切るって、意外と今の時代には必要なことだと感じる。今って情報があふれてるから、どれもマンネリ化してるような気がする。

常に観客の裏をかく

 たとえばドームの試合で俺のシングルマッチが組まれているとしよう。
 相手も正統派の選手でベビーフェイス(プロレス専門用語で「善玉」)同士の対決になるとする。こういうシチュエーションでそこそこ真面目な試合を見せて、手堅く点を取ろうと狙っていくのは俺の性に合わないんだ。
 だったら俺は悪役に回る。最初から一気に試合をスパートさせて、3分間で決着をつけるようなことを望むだろう。いちかばちかの試合になるけど、上手くインパクトを残せたら100点を超える試合になる可能性があるからね。そっちのほうが、やっていてワクワクするじゃん。
 ただそんな試合ができるのも、普段は期待に応える試合をしてる信用があるからだ。「武藤のいい試合はこんな感じ」というイメージがファンの中に出来上がっていて、試合で観たい技もすぐに思いだせるような、明確なイメージを与えておかなくちゃいけない。言わばプロレスにおける「印籠」だよね。印籠を持ってるレスラーじゃないと、客の期待の裏をかくような試合をやってもサマにならない。

 今言った話の発展形というか、応用編のような試合も経験したことがある。
 新日本時代、1999年の1・4東京ドーム大会だった。
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著者プロフィール

1962年生まれ。山梨県富士吉田市出身。山梨県立富士河口湖高等学校卒業。高校卒業後は、東北柔道専門学校(現・学校法人東北柔専仙台接骨医療専門学校)に進学。柔道整復師の資格を取得するとともに、柔道で全日本ジュニア体重別選手権大会95kg以下級3位となる。21歳で新日本プロレス入門、1995年、第17代IWGPヘビー級王者となる。2002年、全日本プロレス入団、同年10月には社長に就任。2013年同団体を退団し、WRESTLE‐1を運営するGENスポーツエンターテインメント代表取締役社長となる(2020年4月、WRESTLE‐1は活動休止)。

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