連載:#BAYSTARS - 横浜DeNAベイスターズ連載企画 -

災禍の後に描く“未来の野球”とは? コロナと闘う横浜DeNAベイスターズ・後編

村瀬秀信

コロナ禍で加速度的に次のフェーズへ

インタビューに答えた木村副社長 【(C)YDB】

 2012年にDeNAが経営に参入して以降、球団は“ハマスタに1人でも多くのお客さんを呼ぶためにはどうすればいいか”という課題に対し、あらゆるアイデアを駆使しながら、必死に取り組んできた。

 その甲斐(かい)あって、右肩上がりに伸びた観客動員はやがてキャパの限度までたどり着いたが、そこから先もさらに、去年と今年でウィング席などを増席。ようやくこの春にハマスタの改修が終わったことで、拡大路線から中・長期的な視点でのファン獲得を視野に入れ始めた矢先に、このコロナ騒動となってしまった。

「拡大路線のなかでも球団として『これが正しい姿なのだろうか?』という自問自答は常にありましたが、結果としてこのコロナによって、より加速度的に次のフェーズへと突入しなければいけなくなったという感覚です。

 次の一手をどう打つか。来年は球団経営に参画して10周年目。次のファンの皆さんに球場へ足を運んでもらうため、初年度から続けてきた子ども招待は継続させつつ、5周年の時に県下の小学生や幼稚園児ら約72万人を対象に帽子配布を行ったような大きな施策も考えています。一方で、このコロナが終息した後、世界がどのような価値観になるのかという危惧もあります。今現在、これだけ世間が『密を避ける』と言われているなかで、野球場が新しい人たちにとって“来やすい環境”であるとは決して言いがたい。ここからニューエントリーしてくる人が一体どれだけいるのか。さらにその懸念は、これまでにわれわれが培ってきた方法論で解決できるものではなく、その答えは、正直まだ手元になくこれから見つけていかなければなりません」

スタジアムが豊かさや幸せの象徴となるために

「昨年までの幸せなにぎわいを球場に取り戻すために努める」。満員のスタジアムを目指して、闘いは始まっている 【(C)YDB】

 東京五輪も延期となり、今シーズンの展望も大きく針路を狂わせたDeNAベイスターズ。コロナを経ての“次の野球”はどのような未来予想図を描いているのだろうか。

「本来であれば、今年の東京五輪で日本経済は良い方向へと変わっていくはずでしたが、このコロナショックで逆方向へと進んでしまいました。特にわれわれのようなエンターテインメントの職種はいわゆる不要不急の存在であり、お客さまにとっても最初に絞るべき消費となります。裏返して言えば、われわれは平和や豊かさの上に成り立っていた存在だったんだなという思いを強くしました。

 そして、横浜スタジアムに約3万4千人が入り、にぎわいを続けることは、この国であり、この街がどれだけ幸せにあふれている状態であるかを証明できる場所だと思っています。世界全体から見れば、優先順位は低いですよ。だから時間はかかるかもしれませんが、われわれがアフターコロナは『元の世界に戻らない』と考えてはいけないと思うんです。信じて待ってくれているみなさんのためにも、昨年までの幸せなにぎわいを球場に取り戻すために努めることが、今のわれわれの心の礎でもあり、プロスポーツを含むエンターテインメント業界に課せられた使命だと考えています」

 アフターコロナの世の中において、スタジアムのにぎわいは、復興のバロメーターであり、この国の豊かさや幸せの象徴となるのだろう。約6000席が増え完全体となった新ハマスタは、いまだに人を入れられていない状態が続いている。このスタジアムが満員の人々であふれる時を目指して、闘いはすでに始まっている。

(取材協力:横浜DeNAベイスターズ)

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著者プロフィール

1975年8月29日生まれ、神奈川県茅ケ崎市出身。プロ野球とエンターテイメントをテーマにさまざまな雑誌へ寄稿。幼少の頃からの大洋・横浜ファン。

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