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今こそ胸に刻みたい「イチロー語録」
普段と変わらぬ自分でいるために
イチローの言葉には人の心を動かす力がある。コロナ禍に苦しむ今だからこそ、胸に刻みたい言葉をまとめた
イチローの言葉には人の心を動かす力がある。コロナ禍に苦しむ今だからこそ、胸に刻みたい言葉をまとめた【写真:ロイター/アフロ】

 デレク・ジーター(現マーリンズCEO)が引退したときだから、2014年のこと。ヤンキー・スタジアムでの最後の試合、最後の打席でサヨナラ安打を放った彼についてイチロー(現マリナーズ会長付特別補佐)が、こんな話をしたことがあった。


「ジーターの場合、やっていることに言っていることが伴っている。だから、人の心が動く。それは当然だと思う。聞いている人にそれが本物の言葉かは、分かるでしょ? 人を見てきた人たちには。誰が言うかということが、ジーターは完全にできている」


 言葉の裏には、その人の人生がある。その人の生き様がある。


「同じことを言っても、意味が変わるだけの蓄積がある」とイチロー。


 それまでの言動次第で、言葉の重みも変わる。用意された原稿を読むのと、自分の言葉で語りかけるのとでは、そもそも比較にならない。


 同様にイチローの言葉にも、人の心を動かすだけの力がある。下を向きがちな今だからこそ、胸に刻みたい。今の時代を生き抜く支えになりそうなイチローの言葉をまとめてみた。

自分のスタイルを意識的に守る

2009年WBCは苦しみながらも、決勝戦で勝負を決めるタイムリーを放ったイチロー。日本を連覇に導いた
2009年WBCは苦しみながらも、決勝戦で勝負を決めるタイムリーを放ったイチロー。日本を連覇に導いた【Getty Images】

「普段と変わらない自分でいることが、僕の支え。この支えを崩してしまうと、今回のような個人的にタフな状況の中で、自分を支え切れないと思っていたので、常にそれを考えていました」


 2009年のWBC(ワールドベースボール・クラシック)は胃潰瘍の痛み、苦しみに耐えながらのプレーだった。予選から不振を極め、最後の最後で決勝打を放ち、ようやくチームの勝利に貢献する形になったが、塁上では喜びを露わにするでもなく、平然としていた。その裏にはそんな思いがあったが、そもそも病気のことを悟らせることもなかった。


“今”に目を転じると、長引く自粛から、生活のリズムが乱れ、普段のルーティンを維持しにくくなっている。それが委縮にもつながっているが、こんな時だからこそ、自分のスタイルを意識的に守ることで、自分も守る。あるいは、そうすることでしか対応できないのかもしれない。


 イチローはこうも言っている。


「毎日やっていくことに変わりはない。それをとにかく重ねていく。それをどこかで切らしてしまえば本当に切れてしまう可能性があるから、そこは大事にしたいし、それをしない僕は僕ではないですから」


 ヤンキースに移籍してから不規則な起用が続いたが、かといって必要な準備、すべきことを変えず、それを重ねた。そうして自分のアイデンティティを保ったのだ。また、その積み重ねこそが、後々の原動力となっていった。

小さな“積み重ね”が導くもの

キャリアを通じて、積み重ねの大切さを説いてきたイチロー(写真中央、左はジーター)
キャリアを通じて、積み重ねの大切さを説いてきたイチロー(写真中央、左はジーター)【Getty Images】

 ちなみにイチローの言葉をたどると、その“積み重ね”の大切さを強調したものが少なくない。


「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」


「小さなことを多く積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」


 イチローがキャリアを通して、守ってきたものの一つと言えるのではないか。


 なお、そうした積み重ねが導くのは、決して自分を超えるだけでも、とんでもないところへいく道だけではなかったよう。


「結果を残すために自分なりに重ねてきたこと。人よりも頑張ったとはとても言えないですけど、自分なりにやってきたということはハッキリと言える。これを重ねることでしか後悔を生まないということはできない」


 現役を終え、「後悔はない」と言い切ったイチローの晴れやかな表情を今もはっきり覚えている。涙もなかった。

丹羽政善
丹羽政善

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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