今こそ胸に刻みたい「イチロー語録」 普段と変わらぬ自分でいるために

丹羽政善

行動に迷ったとき、ヒントになる言葉

判断に迷ったら、「こうした方がいい」よりも「それはまずい」ことを考えて行動するのが良いと、イチロー(写真中央)は示唆している 【Getty Images】

 おそらく今回の自粛は、1カ月や2カ月で終わりそうもない。半年先、1年先を見据えて、今をどう過ごすか。出口が見えないのだからその目標さえ定めにくいが、今の時間の使い方が、収束後に差となって現れるかもしれない。

 そのとき、「ああしておけばよかった」と後悔したくなければ、日々、できることをしていく。そのときイチローが言うように、「自分なりに頑張った」と言えるなら、望み通りの結果が出なかったとしても後悔することはないのかもしれない。

 とはいえ、どう一歩を踏み出せばいいのか。簡単なようで難しいが、次の言葉はそのヒントになる。

「『こうした方がいい』というのは難しいですよ。答えが出づらいんですよ。でも明らかに、『それはまずいよね』という中には、はっきりとした答えがたくさんある」

 行動に迷ったら、これは良くないのでは? と考えてみる。そうすれば、おのずと進む道が見えてくるのかもしれない。一つの指針になりうる。

言葉にして表現する、最後まであきらめない

「50歳まで現役」を公言していたイチロー。言葉にして目標に近づくアプローチをとっていた 【Getty Images】

 また、まずは小さな目標を立て、それを達成したら満足する。そんなアプローチもある。イチローもよく、そんな話をしていた。

「意図的に、『こんな事で満足しちゃいけない』、『まだまだだ』と言い聞かせている人は、しんどいですよ。じゃあ、何を目標にしたらいいんですか? それ(満足感)を味わうとまた次へのやる気、モチベーションが生まれてくると、これまでの経験上、信じている」

 ちょっとしたことでも、満足する。その満足感を積み重ねることが自信につながる。閉塞感が漂う今、そうした自信こそが、この時代を耐え抜く気力、活力になるのではないだろうか。それは無理のない範囲でも構わないと思うが、同時に将来の大きな目標を見据えてみる。できれば、言葉にして。

 イチローは、“最低50歳まで現役”を掲げたが、かなわなかった。しかし、こうも言っている。

「その表現をしてこなかったら、ここまでできなかったかも、という思いもある。だから、言葉にすること、難しいかもしれないけど、言葉にして表現することっていうのは、目標に近づく一つの方法ではないかと思う」

 そのためには最後まであきらめない。

「自分ができると思ったことは、必ずできるとは限らない。だけど、自分ができないと思ってしまったら、それは絶対にできない。自分の中で自分の可能性を決めないでほしい。自分ができないと思うまで、頑張ってほしい」

 あきらめれば、その時点で終わる。可能性のある限り道を探る。その道はどこかにあると信じて――。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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