連載:「欧州5大リーグ」新型コロナ感染拡大の影響

プレミアリーグ、6月8日の再開は現実離れ 今後の見通しは立たないのが実情だ

田嶋コウスケ
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アーセナルの青年監督アルテタの新型コロナウイルス感染はショッキングなニュースだったが、その後次々と選手、スタッフの感染が明らかに 【Getty Images】

 ヨーロッパのほかのリーグ同様、3月13日から中断しているプレミアリーグ。全クラブが残り92試合の消化を希望しているものの、現時点で再開の目処は立っていない。選手給与の一部カットやクラブスタッフの一部解雇などは抜本的な解決策とは言えず、英国自体、ボリス・ジョンソン首相が新型コロナウイルスに侵されるなど(4月12日に退院)、感染拡大に歯止めが掛からない状況だ。北ロンドンに住む筆者によれば、たとえ無観客であっても6月頭にプレミアリーグを再開するのは、イメージできない状況のようだ。
(情報は現地時間2020年4月16日時点)

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最初の感染発表はアルテタとハドソン・オドイ

 欧米各国で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大が、英国でも止まらない。

 4月16日時点で、感染者数は10万3093名と10万人の大台を突破。死者数も1万4576名と、増加の一途をたどっている。英国では3月23日に外出禁止令が発令されたが、はっきりとした効果は現れておらず、英国での感染者数のピークはこれから。英紙『デーリー・テレグラフ』によれば、「4月下旬になる」との見通しだ。

 そのため、16日には英国政府が「外出禁止令の3週間延長」を発表した。英国は、少なくとも5月7日まで「完全停止」の状況が続くことになる。

 外出禁止令で、生活も一変した。(1)食品や日用品など生活必需品の買い物、(2)ジョギングや散歩、自転車など1日1回の運動、(3)絶対必要な通勤(主に医療関係)などのケースを除いて外出は禁止され、違反を繰り返す者には罰金が科せられる。

 生活必需品以外を売る店はすべて閉鎖され、同居人以外と公の場で3人以上で会うことも禁止になった。実際、北ロンドンに住む筆者が運動のため外に出ても、人を見かける回数は驚くほど減り、街は閑散としている。

 サッカー界も完全停止の状況だ。

 3月12日にアーセナルのミケル・アルテタ監督とチェルシーのFWカラム・ハドソン・オドイの感染が発覚し、その翌日にプレミアリーグは一時中断を決めた。当初は4月3日に再開する予定だったが、感染拡大が止まらないため4月30日まで中断期間を延長。さらに、4月3日に「無期限の中断」を決めた。再開時期について、プレミアリーグは「英国政府の全面的な支援と、医療機関の許可があったときのみに行う」としているが、現実的な見通しは立っていない。

 英国の一般社会と同様に、プレミアリーグでも感染は広がっている。先述したアルテタ監督とハドソン=オドイのほか、ブライトンは選手名を「非公表」としながら、1選手に新型コロナウイルスの陽性反応が出たことを発表。ウェストハムは8選手、レスターも3選手に新型コロナウイルスと思われる症状が出たことを公表した。

 ボーンマスもGKアルトゥル・ボルツと4名のクラブスタッフに感染の兆候があると発表したが、いずれも陽性反応はなかったという。一方で、マンチェスター・シティのMFケヴィン・デ・ブライネのように、「喉が痛かった」と体調不良を明かしたものの、感染したかどうかは分からない選手もいる。ほかにも感染者が出ている可能性は十分にありそうだ。

 現時点における英国での感染状況と照らし合わせて考えれば、たとえ無観客試合でリーグを再開したとしても、選手や監督、スタッフに感染者が出てくる可能性は極めて高いだろう。

 それでも各クラブは、リーグ再開に向けて選手のコンディション維持に努めている。リーグ中断から1カ月以上が経過したが、外出禁止令によりチーム練習を行うことができない。そこでクラブによってはビデオ会議ツールを用いて、在宅でのグループトレーニングを開始した。リヴァプールは、フィットネスコーチの掛け声とともに自宅で汗を流す選手たちの姿を公開した。
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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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