ヤクルト・村上が抱く熊本への思い 故郷復興を自らのバットで後押し

菊田康彦
 東京五輪、そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第59回は熊本県出身、野球の村上宗隆(東京ヤクルト)を紹介する。

19歳で36本塁打をマーク、新人王に輝く

高卒2年目の昨季、大きく飛躍した村上宗隆。持ち前の長打力で日本球界の未来を担うことだろう 【写真は共同】

 高卒1年目の2018年、終盤に一軍の舞台に上がって初打席初本塁打を放ったのは、“オードブル”に過ぎなかった。

 翌19年、プロ2年目を迎えた村上宗隆は、小川淳司監督(現GM)によって開幕からレギュラーで起用されると、持ち前の長打力を存分に発揮。早生まれのため当時はまだ19歳ながら、いずれもセ・リーグ3位の36本塁打、96打点をマークした。どちらも10代の選手としては、シーズン最多記録。盗塁王に輝いた阪神のルーキー、近本光司との争いを制して新人王に選ばれた。

 その一方、打率.231はセ・リーグで規定打席に達した30人の中で最下位。184三振はチームの先輩である岩村明憲(現BCリーグ・福島監督)が持っていたリーグ記録を更新し、日本人選手としては歴代最多記録となった。そんな村上に、石井琢朗打撃コーチ(現巨人野手総合コーチ)ら首脳陣は「三振と打率はいいから、ホームランと打点に専念して構わない」と伝えていたという。 最初からすべての数字を追うのは難しい。ならば、持ち味である長打力だけはなくしてしまわないように、との配慮からだった。

今季の目標は「3割、30本、100打点」

春季キャンプ期間中の2月2日が誕生日。二十歳の抱負として「優勝」「ビールかけ参加」を挙げた 【写真は共同】

 ただし、村上本人は決してそれを良しとしていたわけではない。シーズン中も「(打率や三振を)気にしなくていいと言われても、僕は気にしますから」と口にし、「三振を減らしながら、長所もしっかり伸ばせるようにしたい」と今後を見据えていた。だからこそ、プロ3年目となる20年の目標として「打率3割、30本塁打、100打点」を掲げたのである。

 前述のとおり、昨年は「30本塁打」をクリアし、「100打点」にもあと4つ。打率をいきなり7分近くも引き上げるのは容易なことではないが、「1年間いろいろな経験をさせてもらったので、その経験を生かすことはもちろんですし、それにプラスしていろんなところからアプローチして、いろんなことを考えてやっていくことが大切かなと思います」と、高い壁に挑む。

 ちなみにこれまで「3割、30本塁打、100打点」を最年少で達成したのは18年の岡本和真(巨人)で、当時22歳。今年の2月で20歳になったばかりの村上が達成すれば、当然これを塗り替えることになる。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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