セティエン監督の理想からはほど遠く――「メッシ頼み」が加速するバルサの実情

マドリーのつまずきに助けられ、首位の座を奪い返したバルサだが、セティエン監督の就任後も不安定な戦いぶりは変わらない。ポゼッション・サッカーは定着せず、大黒柱メッシに多くを依存する 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 伝統のポゼッション・スタイルを復活させるべく、今年1月にバルセロナの新監督に就任したキケ・セティエンだが、早くも挫折感を覚えているかもしれない。故障者続出に悩まされ、さらにさまざまな構造的欠陥を目の当たりにし、前任のエルネスト・バルベルデと同様、いやそれ以上に「リオネル・メッシ頼み」のチーム作りを余儀なくされているのだ。理想を棚上げにせざるをえなかったセティエン。宿敵レアル・マドリーとの首位攻防戦となる現地時間3月1日のクラシコも、大エースの出来に結果が大きく左右されることになりそうだ。

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ビダルを重用するようになった理由

 キケ・セティエンの“バルベルデ化”が進行している。1月中旬の監督就任当初は、バルセロナ伝統のポゼッション・サッカーの復活に意欲満々だったセティエンだが、チームのさまざまな構造的欠陥を目の当たりにし、ここにきてバルベルデ前監督時代の路線にかじを切り直しているのだ。

 実際、初陣のグラナダ戦(ラ・リーガ20節)で、高いポゼッション率や1000本超えのパス本数が話題になったのも今は昔。むしろそれは、縦に速いサッカーに慣れ親しんでいた選手たちにとってはなじみの薄いプレースタイルであり、カウンターからピンチを招くシーンが続出した。また肝心の攻撃面においても、ボールは回るがスピードが不足し、足元のパスのオンパレードになっていた。

 対戦相手にしてみれば、コンパクトなブロックを作って守り、ボールを奪えば素早く前方に運んで手薄な両サイドバック(SB)の裏のスペースを突けばよかった。

 そもそも、セティエンが当初導入した3-1-4-2というシステム自体が無謀だった。左SBのジョルディ・アルバのポジションを、左ウイングのアンス・ファティに近い位置にまで上げる一方で、逆サイドのセルジ・ロベルトには3バックの一角として振る舞わせることで、攻守のバランスを取るというのが指揮官の狙いだったのだろう。

 しかし、ぽっかりと空いた左サイドのスペースを簡単に攻略され、中盤もセンターバック(CB)もそのサポート役を担えなかった。特に中盤は、セルヒオ・ブスケッツやイバン・ラキティッチといった長年チームを支えてきたベテランが、相手のスピードやパワーに対応できない場面が目立ち、ラインが間延びし、ボールを奪えない要因となっていた。

 そんななか、バルベルデと同様にセティエンもまた、MF陣の中ではインテンシティーの高さで右に出る者のいないアルトゥーロ・ビダルを重用するようになるのだが、それは決して偶然ではない。
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