成長が止まらない矢板中央のサッカー 県勢55年ぶりの舞台へ、1年生GKの思い
前評判は決して高くなかったが、粘り強い戦いで準決勝まで勝ち上がった矢板中央。大会に入ってからの成長ぶりには目を見張るものがある 【写真は共同】
県予選からの連続失点は6試合でストップ
個人的な話になるが、選手権は毎年、大分県代表を取材してきた。今大会の出場校は昨季に続き大分で、12月31日の1回戦の相手が栃木県代表の矢板中央だった。
試合は、前評判の高くなかった矢板中央が前半4分に多田圭佑の得点で先制すると、後半7分には左合修土が自ら奪ったPKを決めて2点目。試合内容では大分が上回っていたが、このまま2-0で矢板中央が押し切るだろうと思われた。ところがここから矢板中央は2失点。その後、両チームとも勝ち越しのチャンスを作りながらもスコアは動かず、試合はPK戦に入ることとなった。
PK戦は両チームとも5人ずつ決めてサドンデスへ。先攻・大分の6人目、キャプテンの佐藤芳紀がミス。ところが、決めれば勝利の矢板中央・矢野息吹もミスをして7人目に。ここで矢板中央のGK藤井陽登が魅せる。大分の7人目、竹谷悠のキックを藤井がキャッチ。矢板中央7人目の服部晃多は、大分のGK塩治晴士にコースを読まれながらもこれをねじ込み、矢板中央の勝利となった。
成長を続けるチームの象徴とも言えるのが1年生GKの藤井だ。1回戦の大分戦では殊勲のPKストップ。勝利の立役者となった 【写真は共同】
「GKが1年でね。青森から来てくれた藤井陽登が(県大会決勝の)PK戦で2つ止めて、今日も止めてくれた。殊勲者ですね」
もともとは正GKだった3年生、溝口陽日のケガによる代替出場だったが、藤井は与えられたチャンスをものにしてポジションをつかみ、劣勢の選手権1回戦で勝利をもたらした。
青森の十和田中在学時に練習会に参加し、矢板中央への入学を決めたという藤井は、この試合後、地元青森の強豪・青森山田について聞かれると、「(青森)山田とやりたいです。山田にはプロに内定している人もいますし、年代別代表の選手も何人もいるので。そこは刺激にもなりますし、だからこそ試合をした時には倒したいです」と意気込みを語った。
矢板中央が青森山田と対戦するには決勝まで勝ち進む必要がある。1回戦の試合内容を見るかぎり、そこまでの力はないだろうと思っていたが、予想に反して、矢板中央は粘り強く勝ち進む。
続く2回戦の大手前高松(香川)戦は、?見拳士朗と左合の得点により2-1で勝利。だが試合後の高橋監督は満足した表情ではなく、止まらない失点について次のように語った。
「県予選4試合で全試合失点しています。今大会も大分に2失点。今日はゼロで行こうという話をしたんですが1失点。指導者を長くしていますが、全試合で失点してここまで勝ち上がってきたのは初めてなので。まだ課題があるチームです。とにかく失点ゼロで(3回戦の)鵬学園(石川)戦は終わりたいですね。堅守速攻の矢板中央のスタイルを貫けるか。もう一度チームを作りたいです」
チームを作ると言っても試合は翌日。どこまで立て直せるのかと鵬学園戦の戦いを見守っていると、2-0で勝利。県予選から続いていた連続失点を6試合でストップした。