成長が止まらない矢板中央のサッカー 県勢55年ぶりの舞台へ、1年生GKの思い

江藤高志

前評判は決して高くなかったが、粘り強い戦いで準決勝まで勝ち上がった矢板中央。大会に入ってからの成長ぶりには目を見張るものがある 【写真は共同】

 矢板中央が下馬評を覆す快進撃を見せている。試合を重ねるごとにたくましさを増し、ついに全国高校サッカー選手権の準決勝まで勝ち上がった。ベスト4入りは過去にも二度果たしているが、決勝進出となれば同校初、栃木県勢としては43回大会の宇都宮学園(現・文星芸大付)以来、55年ぶりの快挙となる。その舞台にたどり着ければ、躍進の原動力とも言える1年生GK、藤井陽登が望む青森山田との対戦が実現するかもしれない。

県予選からの連続失点は6試合でストップ

 よく言われることだが、高校生は短期間で驚くべきスピードで成長することがある。今大会を取材する中で、それを実感しているチームが矢板中央だ。

 個人的な話になるが、選手権は毎年、大分県代表を取材してきた。今大会の出場校は昨季に続き大分で、12月31日の1回戦の相手が栃木県代表の矢板中央だった。

 試合は、前評判の高くなかった矢板中央が前半4分に多田圭佑の得点で先制すると、後半7分には左合修土が自ら奪ったPKを決めて2点目。試合内容では大分が上回っていたが、このまま2-0で矢板中央が押し切るだろうと思われた。ところがここから矢板中央は2失点。その後、両チームとも勝ち越しのチャンスを作りながらもスコアは動かず、試合はPK戦に入ることとなった。

 PK戦は両チームとも5人ずつ決めてサドンデスへ。先攻・大分の6人目、キャプテンの佐藤芳紀がミス。ところが、決めれば勝利の矢板中央・矢野息吹もミスをして7人目に。ここで矢板中央のGK藤井陽登が魅せる。大分の7人目、竹谷悠のキックを藤井がキャッチ。矢板中央7人目の服部晃多は、大分のGK塩治晴士にコースを読まれながらもこれをねじ込み、矢板中央の勝利となった。

成長を続けるチームの象徴とも言えるのが1年生GKの藤井だ。1回戦の大分戦では殊勲のPKストップ。勝利の立役者となった 【写真は共同】

 試合後、矢板中央・高橋健二監督は大分のパスワークの質の高さを称えつつ、勝利の立役者と言えるGK藤井の話を始めた。

「GKが1年でね。青森から来てくれた藤井陽登が(県大会決勝の)PK戦で2つ止めて、今日も止めてくれた。殊勲者ですね」

 もともとは正GKだった3年生、溝口陽日のケガによる代替出場だったが、藤井は与えられたチャンスをものにしてポジションをつかみ、劣勢の選手権1回戦で勝利をもたらした。

 青森の十和田中在学時に練習会に参加し、矢板中央への入学を決めたという藤井は、この試合後、地元青森の強豪・青森山田について聞かれると、「(青森)山田とやりたいです。山田にはプロに内定している人もいますし、年代別代表の選手も何人もいるので。そこは刺激にもなりますし、だからこそ試合をした時には倒したいです」と意気込みを語った。

 矢板中央が青森山田と対戦するには決勝まで勝ち進む必要がある。1回戦の試合内容を見るかぎり、そこまでの力はないだろうと思っていたが、予想に反して、矢板中央は粘り強く勝ち進む。

 続く2回戦の大手前高松(香川)戦は、?見拳士朗と左合の得点により2-1で勝利。だが試合後の高橋監督は満足した表情ではなく、止まらない失点について次のように語った。

「県予選4試合で全試合失点しています。今大会も大分に2失点。今日はゼロで行こうという話をしたんですが1失点。指導者を長くしていますが、全試合で失点してここまで勝ち上がってきたのは初めてなので。まだ課題があるチームです。とにかく失点ゼロで(3回戦の)鵬学園(石川)戦は終わりたいですね。堅守速攻の矢板中央のスタイルを貫けるか。もう一度チームを作りたいです」

 チームを作ると言っても試合は翌日。どこまで立て直せるのかと鵬学園戦の戦いを見守っていると、2-0で勝利。県予選から続いていた連続失点を6試合でストップした。

1/2ページ

著者プロフィール

1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にサッカーライターに転身。J2大分を足がかりに2001年から川崎の取材を開始。04年より番記者に。それまでの取材経験を元に15年よりウエブマガジン「川崎フットボールアディクト」を開設し、編集長として取材活動を続けている。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント