鈴木誠也は序盤から流れを感じ取っていた プエルトリコ戦・勝負を分けたポイント

中島大輔

「重い雰囲気になっている時間もない」

相手の守備の乱れで先制した直後、試合を決める3ランを放った鈴木誠也 【写真は共同】

 プレミア12の2戦目・プエルトリコ戦は、終わってみれば4対0と侍ジャパンの完勝だったが、両チームの攻防が行われた計17イニングのうち、試合が動いたのはわずか1度だった。0対0の重い雰囲気で迎えた3回裏、侍ジャパンが一挙4点を奪った場面だ。

 四球と2本の内野安打に相手エラーが絡んで1点を先制した直後、2死一、三塁から4番・鈴木誠也(広島)が2球目のストレートを振り抜き、レフトに3ランを突き刺してリードを広げる。この一発が大きくものをいい、侍ジャパンは4対0で逃げ切った。

「何も考えず、来た球を打っただけです」

 試合後のミックスゾーンで淡々と話した鈴木だが、ただ、何も考えていなかったわけではない。試合序盤から勝負の流れを感じ取っていた。
 0対0の2回裏、先頭打者の鈴木は8球粘って四球を選ぶと、続く浅村栄斗(東北楽天)の2球目で二盗を決めている。

「スキがあったので、積極的に行ってしまおうかなという感じはありました。最初、(打線が相手投手に)手こずっていた部分があったので、何とか得点圏に進んでプレッシャーを与えられたらと思っていました」

 前日、ベネズエラの先発左腕ドゥブロンに4回無失点に封じ込められたのに続き、この日も同じく左腕のソトに立ち上がりからタイミングを合わせられず、初回を三者凡退に抑えられた。ただしベネズエラ戦の序盤のように、重い雰囲気ではなかったと鈴木が言う。

「(国際試合では)なかなか打つのが難しい。打ち取られた選手が後ろに、どういう球筋だったとかをどんどん伝えていかないといけないので、重い雰囲気になっている時間もないというか。自分のことではなくて、次へ、次へで、打ち取られたらどういう球だったと伝えるようにしています」
 そうして3回裏、2死からラッキーな形で先制する。追加点がほしい場面で、打席に向かったのが鈴木だった。

「一つのミスでこういう試合はどんどん動いていくと思うので、ミスしない者が勝つと思う」

 2017年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を経験している鈴木は、今回のプレミア12でも試合の流れを感じつつ、冷静に打席に向かえている。前日のベネズエラ戦で5回に勝ち越しタイムリーを放ったのに続き、プエルトリコ戦でも大きな仕事を果たした要因についてこう振り返った。

「自分のやれることだけを決めて、整理して打席に入っています。それは平常心なのかな。でも、気持ちはやっぱり高ぶっている部分があります。それでも頭の中は冷静に、しっかりやることはできていると思います」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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