日本代表、運命の一戦で問われる総合力 データで見るスコットランド戦

斉藤健仁

アイルランド戦のように攻撃時間を増やせるか?

トンプソン ルークを中心としたラインアウトでも優位に立ちたい 【写真:ロイター/アフロ】

 そしてスクラム、モールといったセットプレーも強く、特にラインアウトが安定しており、サモア代表戦では17本のラインアウトを投げて100%の成功率を誇った。身長201センチのLOグラント・ギルクリストと身長199センチのLOジョニー・グレイを核としたモールからのトライも得点パターンのひとつだ。

 ジョセフHCも「スコットランド代表は大きくて経験値の高い選手がそろっているので、空中でのプレッシャー、モールでのフィジカルの力を入れてくると思っている」と話したように、ハイボールとモールをうまく使って戦ってくることは明白である。

 まず日本代表としては、スコットランド代表のキーマンである9番、10番、15番に自由にプレーさせないよう、ある程度、アイルランド代表戦同様に、ボールをキープして攻撃時間を増やすことが大事になってくるだろう。もし攻撃されても、今大会、成功率が90%以上をたたき出しているタックルで止めてモメンタム(勢い)を奪いたい。
 接点周り、そしてラインアウトでは日本代表のLOトンプソン ルークとジェームス・ムーアの2人の活躍が鍵になりそうだ。

相手のキックへの対応もポイント

パスか、キックか。日本代表SH流の判断もポイントになる 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 ただ、台風一過で強風も予想されていることから、エリアに応じてSH流大、SO田村優からのハイパントキックやグラバー(転がす)キックもうまく、賢く使いたい。自分たちが蹴った場合は、すぐに相手のキャッチした選手にプレッシャーをかけることは必須だ。

 また相手のキックに対しても、しっかりとキャッチしてチャンスを与えたくない。ハイボールの処理のうまいWTB福岡堅樹が今大会初先発し、4戦連続先発のWTB松島幸太朗、開幕戦以来の先発となったFBウィリアム・トゥポウもハイボールには強いのでバックスリーの連係とキャッチスキルに期待したい。

さまざまな状況への対応力が必要に

ファンの声援を背に日本代表が大一番を迎える 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 相手にはプレースキックの名手で、前回大会の対戦で4G、4PGを成功させたSHレイドローがいて、モールも強力である。自陣でのペナルティは失点に直結するため、極力少なくしたいところ。

 日本代表のペナルティ数はロシア代表戦5回、アイルランド代表戦6回だったが、サモア代表戦は10回と増えてしまったことが苦戦の要因の一つにもなった。リーダーのひとりPR稲垣啓太は「反則をしないことが大事」と語気を強めた。

 日本代表は勝ち点で4点リードしていることから、引き分けか勝つかでベスト8進出が決まる。今大会、10PG、5Gを成功させて計40点を挙げているSO田村の右足で得点を刻むことも大事となってくるだろう。

 日本代表がアイルランド代表に続いて、欧州の伝統国であるスコットランド代表を撃破し、初のベスト8進出なるか――相手の戦術、気候条件、得点差といった状況に対応する、ジェイミー・ジャパンの集大成となるような最高の試合に期待したい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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