ラグビーW杯2019特集

データが実証する日本代表の「戦術の幅」
ラグビーW杯・サモア戦を振り返る

アイルランド戦とは違う戦い方を選択

終盤に戦い方を確認する日本代表。さまざまな戦術に対応している
終盤に戦い方を確認する日本代表。さまざまな戦術に対応している【Photo by Yuka SHIGA】

 10月5日、愛知・豊田スタジアムで、ラグビー日本代表はワールドカップの予選プール3試合目となるサモア代表戦を迎えた。なんとかラストプレーでWTB松島幸太朗が4つ目となるトライを挙げて38対19で勝利し、3連勝で勝ち点を14としてプールA首位に立った。


 終わってみればダブルスコアで勝利した日本代表の勝因はどこにあったのか。データ(STATS 共同通信デジタル提供)で振り返ってみたい。


 日本代表のジェイミー・ジョセフHCは「スコットランド代表がサモア代表にキックを使っていて有効だと思った」と振り返ったように、この試合はキッキングゲームで勝負に挑んだ。体格の大きなサモア代表に対して、コンテスト(相手と競り合う)キックを蹴ってディフェンスから主導権を握ろうと考えたわけだ。


 極力タッチキックを蹴る回数も少なくし、SO田村優やバックスリー(WTB、FBの3人)もハイパントキックを主体に、グラバーキックなども交えてトライを取りにいった。キッキングゲームで相手にプレッシャーをかけるのはこの4年間、ジェイミー・ジャパンが取り組んできた形、そのものである。


 その結果、キックの回数はアイルランド代表戦の18回より9回多い27回、ボールが蹴って飛んだ距離も、577メートルから767メートルに増えている。また、この試合では自陣22メートルからハーフウェイラインの間のハイパントキックが多く、実に12回を数えた。

ディフェンスではFW陣の奮闘が光る

FLリーチとLOファンデルヴァルトのダブルタックルが決まる
FLリーチとLOファンデルヴァルトのダブルタックルが決まる【Photo by Yuka SHIGA】

 結果、ボールを継続してアタックする時間は約22分から16分と減り、ディフェンスの時間、タックル回数が自然と多くなった。それでも失トライが1だったように個々のタックルはフィジカルの強いサモアにしっかりと決めていたと言えよう。


 この試合、日本代表は相手より20回多い、140回タックルに行き、ミスは12回で成功率は92%だった。そしてタックル回数は、アイルランド代表戦に続いてヴィンピー・ファンデルヴァルト、ジェームス・ムーアのLO陣が15回ずつで仲良くトップタイ、3位がFLリーチ マイケルで14回、4位はFLピーター・ラブスカフニが13回とFW陣の奮闘が光る。


 ラブスカフニはラックに加わった回数が18回、クリーンアウト(ラックで相手を排除する)も7回でチーム3位、ボールキャリーもFWトップの6回と、この試合も攻守にわたって身体でチームを引っ張った。そのため、チーム内MVPである「ソード賞」はラブスカフニが選出された。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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