連載:W杯から東京2020へ――平成バレー界のエースが語る

全日本男子がバレーW杯で勝利する最善策 山本隆弘がカギに挙げる「攻めのサーブ」

田中夕子
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中垣内祐一監督(後列右端)が率いる全日本男子にとって、W杯は結果にこだわる大会だ 【写真は共同】

 シーズン当初からエースの石川祐希が「メダルを狙う」と宣言しているように、東京五輪前年のワールドカップ(W杯)は男子日本代表にとって「結果」にこだわる大会だ。昨年、イタリアで行われた世界選手権は1次リーグ敗退と悔しい結果になったが、近年取り組んできたスタイルに、選手たちは手応えを示している。だからこそ、W杯では、高さ、パワー、強さ、巧さ、経験で勝る相手に対し、日本はどんなバレーボールをすれば上回ることができるのか。年々進化する世界のバレー、そして日本代表の取り組み。現在は解説者としても現場を見続けている山本隆弘さんにポイントを聞いた。

サーブを打つ場所、目的に注目すると面白い

サーブに着目することで日本の目的が見えてくると話す山本隆弘氏。戦術的な観点からW杯の見どころを語ってくれた 【撮影:熊谷仁男】

――今大会は五輪出場権がかかるわけではありません。日本チームの見どころはどんなところにあるでしょうか?

 3年間積み重ねてきたことがどれだけ世界トップクラスに通用するかを確認するための、前哨戦です。相手がどんなメンバーであろうと、日本チームとしてはやってきたことの何が通用して、何が足りないか。それをこの大会で確認し、自信をつけるところはつけて、見つけた課題は来年の五輪までに克服することが、一番のテーマになるはずです。

――山本さんからご覧になって、今の日本バレーの特徴は?

 サーブの強化を図ってきているので、サーブでは世界ナンバーワンを狙う。そこにプラスして、サーブレシーブからのサイドアウト率が世界ナンバーワンになれば、面白いと思います。サイドアウト率、と言うと、サーブレシーブの返球率を高めて1本で攻撃を決めよう、と思ってしまいがちですが、サーブレシーブの返球率はどうでもいい。むしろ1本で決めるのではなく、難しい状況では無理せず、何本もリバウンドをもらってでも相手にブレイクポイントを与えず、サイドアウトは確実に得点につなげる。大事なのは、その確率を高めることです。アタッカーとしては、きれいに決めたい気持ちもあるかもしれませんが、1本で決めなければいけない理由はない。チャンスが来るまで粘って待つ、そのために相手のチャンスにならざるを得ない状況でも相手の嫌なところに返す。相手にサーブ権があるときに得点を与えなければ、それだけ勝利に近づく可能性も高まる。見ている方もそこに注目していただけると、バレーの奥深さが分かるのではないでしょうか。

――バレーの奥深さ、まずどんなポイントを見れば分かりやすいですか?
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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