連載:夏を待つ高校野球の怪物たち

星稜・奥川恭伸は「勝てる投手」へ進化中 世代ナンバーワンの経験値を生かして

沢井史
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久々の登板でも「らしさ」を見せた奥川

控えの同級生たちの引退試合を見て、夏に向けて決意を新たにした奥川 【沢井史】

 星稜・奥川恭伸はどれだけ良いピッチングをしても「完璧」という言葉を選ばない。

 昨秋の北信越大会の松本第一戦の10者連続奪三振、明治神宮大会の広陵戦の7回11奪三振0封の快投、そしてセンバツの履正社戦の17奪三振完封劇。

 どれだけ好投を称えられても、試合後の取材では「打ち損じが少なかった」とか「この場面でボール1個分のコントロールが甘かった」と反省点を見つけては口にする。時には「(注目される高校生投手の中で)自分は一番下。何も特徴がない」と“嘆き”を発することも少なくない。最低限、自身に賛辞を送っていたとしたら「たまたまです」と言うくらいだろうか。

 だが、最近は思うような結果を残せなかったとしても、そこまでネガティブな表情を見せることが少なくなった。そう感じたのはこの6月の奥川のマウンド後のコメントだ。
 6月は春季北信越大会から始まり、履正社、愛工大名電、東海大相模、と全国の強豪校相手に練習試合のマウンドに立った。いずれも失点し、決して満足のいく内容ではなかったかもしれないが、それでも奥川は「それぞれの試合で収穫があった」と前向きにとらえている。

 4月中旬に右肩に軽い張りを訴えて以降、約1カ月半ぶりの対外試合のマウンドだった春季北信越大会の初戦・砺波工戦。6回を投げ6奪三振、無失点とブランクを一切感じさせない快投で復活を果たした。決勝の敦賀気比戦は4回に先制を許すも8回に最速150キロをマークするなど、9回を投げ切り11奪三振1失点。8回1死からは5者連続三振で相手を寄せつけず、「やはり奥川か」と感じずにいられなかった。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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