連載:夏を待つ高校野球の怪物たち

横浜・及川が「内緒」にしていた新球種 3年間の悔しさをぶつける最後の夏

大利実
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センバツ3回途中5失点で気付いた課題

1年生から甲子園に出場した及川が、いよいよ最後の夏を迎える 【写真は共同】

 6月上旬、横浜高校長浜グラウンド。
 春の県大会以来、1カ月半ぶりに会った及川雅貴(およかわ・まさき)は充実した表情をしていた。
「ストレートの指のかかりが良くなっています。最近ではなかった感覚で、しっくりきています」
 状態は上向き。平田徹監督、金子雅部長も「夏に向けて、いい感じに上がってきている」と口をそろえた。

 センバツの初戦で明豊に3回途中5失点と打ち込まれたあと、フォームの修正に力を入れた。明豊戦のビデオを見返す中で感じた課題は、上体の突っ込みと、後ろに入りすぎるテイクバックだった。テイクバックは、「(利き手を)太ももの横にくっつけておくようなイメージ」を心がけ、以前よりもコンパクトになった。

「後ろに入り過ぎる分、トップに入るタイミングがずれることがありました。自分で変えてみたところ、いい感じにまとまってきました」

 テイクバックを変えたことで、上体の捻(ひね)りも抑えられるようになった。ある程度の捻りがなければ強い球は放れないが、及川の場合は「速い球を投げたい」という欲から捻りすぎているところもあった。

「今の投げ方では150キロは出ないと思いますけど、それよりもストレートの質やコントロールを大事にしたい。回転数の多いストレートが理想です」

 変化球について問うと、意外な言葉を発した。
「カーブを投げ始めたことで、ストレートもしっかり叩けるようになりました」

 カーブ……?
 そう聞き直すと、「申し訳ありません、カーブを投げていました」とペコリと頭を下げた。
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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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