連載:夏を待つ高校野球の怪物たち

近江・林&有馬が誓う甲子園でのリベンジ 絆を武器に最後の夏を2人で駆け抜ける

沢井史
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今でも浮かび上がる“あの場面”

センバツ出場は逃したものの、昨秋、今春と県内では負けなし。昨年の悔しさを晴らそうと最後の夏に挑む林(写真左)と有馬 【沢井史】

 昨夏の甲子園を回顧する時、どうしても浮かび上がるのは近江と金足農が熱戦を繰り広げた末の、“あの”場面だ。2−1で迎えた9回裏。無死満塁から金足農の9番・斎藤璃玖に2ランスクイズを決められ、まさかのサヨナラ負け。その瞬間、マウンドにいた背番号18の林優樹は呆然とし、捕手の有馬諒はホーム上で突っ伏したまましばらく動けなかった。

 あれからもう1年が経とうとしている。林は不動のエースとなり、有馬は攻守を支えるキャプテンになった。昨秋、今春と県内では負けなし。今春の近畿大会では優勝を果たし、ひとつの称号を得たバッテリーは、ラストサマーへ向け目の前の道をひた走っている。

昨夏の金足農戦、最終回に2ランスクイズを決められて敗退。悔しい思いをした近江・有馬(写真左) 【写真は共同】

 無敗で終えた今春の公式戦について、林は「冬に練習していたことが、やっと出てきたような気がします」と振り返る。シーズンインした3月上旬以降、春休みにかけて近江は多くの強豪校と立て続けに練習試合を組んでいた。林のマウンドを見る限りでは調子の波は感じなかったが、本人からするとベストの状態ではなかったという。冬場からテーマに挙げてきた、最大の武器であるチェンジアップに頼らないピッチングができていなかったからだ。

 センバツの切符を逃し、長い冬だったからこそ、この冬はさまざまなテーマにじっくりと取り組んだ。体力強化、変化球のレベルアップ……その中で最も力を入れたのが、チェンジアップ以外の球種を磨くことだった。それでもストレートの球質に物足りなさを感じ、力の入れ方を変えてはみたが、納得のいく球が投げられない。しかし、春の滋賀大会に入ると徐々にストレートに力強さが増し、捕手の有馬からも「良くなっているぞ」と褒められるようになった。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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