連載:夏を待つ高校野球の怪物たち

「大人」へと成長した創志学園・西純矢 静かなる闘志で高校最後の夏を戦い抜く

沢井史
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ライバルの姿に心を打たれた

「BIG4」の一角に連なる西。甲子園出場に向け、モデルチェンジをはかっている 【沢井史】

 昨秋の悔しい敗戦を最後に、しばらく表舞台から遠ざかった創志学園・西純矢が、久々にメディアの前に登場したのは4月上旬のU-18日本代表候補合宿。大船渡・佐々木朗希、星稜・奥川恭伸、横浜・及川雅貴、東邦・石川昂弥らとの記念撮影では笑顔で肩を並べるも、実は人見知りの性格から合宿初日から表情はどことなく硬かった。それでも昨夏から注目を浴びる右腕らしく、実戦形式の練習では最速146キロの速球を披露し、落ち着いたマウンドさばきを見せた。

「佐々木君はやっぱり評判通りのすごいピッチャーでした。練習前のストレッチからも黙々とこなしていて、話しかけられない空気があって……。あと、自分はバッティングにも自信を持っていますが、同じ投手で一番バッティングが良いなと思ったのは宮城君(大弥/興南)でした」

 すらすらと合宿での感想を述べる中で、やはり最も意識してきたという奥川の話題になると西は嬉しそうにこう続ける。
「合宿初日の講義の時から、奥川君とは席が近い方ではなかったのによく目が合っていたんです。でも、お互い人見知りでなかなか話しかけられなくて。初日の合宿の夜、宿舎の廊下でみんなで集まって話をしていたら、何かの流れで奥川君と話すようになりました。それからピッチングの話で盛り上がりました。奥川君はやっぱり考え方が先を行っているというか……。一言で言うと“大人やなあ”って」

 今春のセンバツで躍動した奥川のマウンドでの姿の中で、西が心を打たれたシーンがある。初戦の履正社戦。8回裏に2死一塁の場面で、代打の関本勇輔(履正社)が打った三塁ゴロが三塁手の悪送球でセーフとなり、2死一二塁のピンチに膨れ上がった。三塁手は2年生の知田爽汰だ。委縮していまいそうな2年生に対し、奥川はすぐさま“切り替えろ”と声を掛け、指をクルクル回すジェスチャーを見せた。

「あの場面こそ、奥川君は大人だと思いました。秋までの自分があのマウンドに立っていたら、イライラしていたと思います」と西は苦笑いした。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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