決勝に向けてサニブラウンに自信あり 桐生、小池も虎視眈々と王座を狙う

スポーツナビ
 陸上の日本選手権が27日に福岡・博多の森陸上競技場で開幕し、男子100メートルの予選と準決勝が行われた。9秒97の日本記録保持者であるサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)は準決勝2組で大会タイ記録となる10秒05をマークし、決勝進出。準決勝1組では小池祐貴(住友電工)が桐生祥秀(日本生命)に先着し、10秒09で1組1着となった。

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圧倒的な加速力を見せたサニブラウン

準決勝で10秒05の大会タイ記録を出したサニブラウン 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 やはり日本記録保持者のインパクトは強烈だった。予選では見た目に分かるほどスタートが出遅れたサニブラウン。「ピストルが鳴るまでのスピードが早かった。(準決勝は)しっかり集中して反応した」と頭をかいた。準決勝でもスタートの合図への反応時間は2組合わせて最も遅い0.18秒かかったが、中盤からの加速で後続をぐんぐん引き離し、自身の2年前の大会記録に並ぶタイムをたたき出した。

 5月以降、追い風参考記録も含めると、すでに3度の9秒台をマークしている20歳。この日見せた2度の走りからも、優勝の大本命となることは間違いない。28日の決勝に向けても「スタートの部分がうまくいけば、いいレースになると思う」と冷静そのもの。日本選手権という大舞台でのさらなる記録更新に期待は高まるが、プレッシャーは感じていないようだ。

小池は「自分のレーンに集中できている」

小池は決勝の舞台でさらなる集中を発揮できるか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 決勝に向けて、非常にいい状態にあるのが小池だ。準決勝では同学年の桐生と同走。中盤以降にライバルを突き放し、1組1着でゴールテープを切った。タイムでもサニブラウンに次ぐ10秒09を残し「タイムはもう少し出てもいいかなと思ったけど、湿度が高くて少し体が重い感じがした。でも、今日できるベストのレースができた」。気温26.6度、湿度81%(19時時点)という蒸し暑さの中でも結果を出し、納得の表情を見せた。

 200メートルを本職とする小池にとって、100メートルを走る上での課題は「いかに自分のレーンに集中するか」だったという。この準決勝では隣を走る桐生に気を取られることなく、高い集中力を持ったまま最後まで走りきった。

「自分のレーンに集中できていると、周りの視界が全て風景に見えるというか、見えているものに何も思うことなく、自分のことだけに集中できているという感覚があります。『しっかり地面から反力をもらっている』とか、『腕がちゃんと上がっている』とか、そうしたことだけを感じます」

 準決勝でこの日のベストと言えるパフォーマンスを出せたことで「それが刺激になって、明日はさらに体の切れが上がると想定しています」と言い切った。レベルが一段階上がる決勝の舞台で、さらなる集中を発揮することはできるか。

桐生も「決勝で一発の力を出す」と自信

サニブラウンの日本記録を「僕がまた超えたい」と強い口調で話した桐生 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 桐生は準決勝で小池に先着を許したが、「(周りは)全部見えていたので、2着だということは分かっていた。70メートルくらいから追うのをやめて、横を確認しながら走った」と力を温存し、順位をキープすることを心がけていた。「決勝で一発の力を出す。落ち着いて、中盤から後半にかけて勝負したい」と、自信を持って答えた。

 前日本記録保持者としてのプライドものぞかせる。7日の全米大学選手権でサニブラウンに記録を0秒01更新され、「いずれ誰かに破られるか、また自分が更新するかなと思っていて、それをハキーム君が破ったというだけのこと。それを僕がまた超えたいという思いがある」と強い口調で語った。

 世界選手権(9月27日開幕/カタール・ドーハ)に向けて、すでにサニブラウン、桐生、小池、そして気胸により今大会を欠場した山縣亮太(セイコー)の4人が参加標準記録の10秒10をクリア。初めて9秒台の自己ベストを持つ選手が2人参加する大会でもあり、史上最もハイレベルな決着になることは間違いない。激戦を制して全日本王者の座を勝ち取るのは、果たして誰か。

(取材・文:守田力/スポーツナビ)
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