“プロバスケ選手”が夢の職業に
1億円Bリーガー誕生の意味を考える

富樫が日本人初の1億円プレイヤーに

日本人初の1億円プレーヤーとなったことが発表された富樫勇樹
日本人初の1億円プレーヤーとなったことが発表された富樫勇樹【(C)B.LEAGUE】

 6月3日、都内の高級ホテルでBリーグと千葉ジェッツの合同記者会見が実施された。「選手契約に関する重大発表」と予告されたその内容は、富樫勇樹選手が日本人初の1億円プレイヤーになったという報告だった。


 1億円はまずバスケ界の「外」に向けたアピールになる。今回の会見には約70社、104名の記者が集まった。プロ野球がなくスポーツの話題が乏しい月曜に会見を設定したことは賢明で、テレビも相応の時間を割いてこの話題を取り上げていた。Bリーグが明るい状況にある分かりやすい証明として、間違いなくいいプロモーションになった。


 Bリーグ開幕時を思い出すと、大河正明チェアマンは「日本代表がアジアのトップの仲間入りをすること」「1億円プレイヤーの誕生」「入場者数300万人/事業規模300億円」の3つを目標に掲げていた。2月に終わったワールドカップ(W杯)アジア2次予選ではオーストラリア、イランといった強豪を倒し、本大会出場を決めている。そして今回、2つ目のミッションが達成された。


 スポーツ選手の給与は基本報酬以外に出場時間、チームの勝敗や成績に応じたインセンティブ(加算給)がある。富樫の大台到達はあくまでも「基本報酬」に限った話だ。クラブの島田慎二代表はこう説明する。


「インセンティブが加算されて到達したのでなく、いわゆる基本報酬で1億円に達しました。そこにすべてが含まれるということでなく、インセンティブによる振れ幅は大きいです。最終年俸がどこにたどり着くかは、チーム成績が大きく寄与する。来シーズンも今シーズンのような結果が出れば、ポジティブな振れ幅になると思います」

Bリーグ発足で選手待遇が大幅に改善

島田代表(左)はビジネス面への貢献が評価につながったとコメント
島田代表(左)はビジネス面への貢献が評価につながったとコメント【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 2018−19シーズンの千葉は天皇杯3連覇を達成。レギュラーシーズンでは52勝8敗と史上最多の勝利数を記録した。チャンピオンシップこそファイナルでアルバルク東京に敗れたが、堂々たる成績を挙げた事実は間違いない。25歳の富樫は千葉のポイントガードとして大活躍しただけでなく、日本代表の主力としてW杯出場にも貢献している。彼はレギュラーシーズンのMVPにも選出された。


 1億円はもちろんプレイヤーとしての価値を示す数字だ。米国で活躍する渡邊雄太、八村塁は別格だが、Bリーグの日本出身選手でその名誉を手に入れる資格があるのはまず富樫だろう。


 ただし、どんないい選手であっても、給与を払うのはクラブ。1億円は「経営力」を示す指標でもある。


 島田代表は高額年俸の理由として、競技面への貢献以上に「ビジネス面への貢献」を挙げている。富樫はチーム一の人気選手で、チケットやグッズなどの売り上げに対する貢献が多い。彼はメディアに取りあげられる頻度の高い選手だが、それによってクラブの協賛価値も上がっている。富樫は千葉を稼がせた功労者で、それが本人に還元された。


 Bリーグが開幕する直前の2015−16シーズンを振り返ると、NBLは1億5000万円、bjリーグは6800万円の年齢総額制限(サラリーキャップ)を設定していた。サラリーキャップに勝利給、出場給などのインセンティブを加味していなかった旧NBLでも、12〜13名の選手と契約することを考えれば、ひとりに1億円を出す規模感はなかった。


 しかしBリーグが発足して2季目(2017−18シーズン)の時点で、千葉以外にも栃木ブレックス、A東京、シーホース三河が4億円超のトップチーム人件費を支出している。Bリーグの発表する人件費にはインセンティブ、コーチングスタッフの分も含まれるため旧リーグ時代より「高め」に出るが、選手たちの待遇は大幅に改善した。


 売り上げが伴わない状況で、選手の年俸だけが高騰する状況は健全でない。しかし千葉はそれに見合った収入をあげている。大河チェアマンはこう説明する。


「富樫選手に一極集中して1億円プレイヤーが出たのでなく、出るべくして出た。3シーズン目の千葉は事業規模が選手13人で17億円。大体ひとりあたりが1億3000万円の収益を生み出している。Jリーグは30人強の選手がいますので、ひとり当たりで考えればJリーグでも中堅クラブに匹敵する事業規模です」

大島和人
大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、バレーなどの現場にも小まめに足を運び、試合観戦数は毎年300試合を超える。日本を実はサッカーだけでなくバスケ強国であるスペイン、バレー王国・ブラジルのような球技大国にすることが一生の夢で、“球技ライター”を自称している。

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