“プロバスケ選手”が夢の職業に 1億円Bリーガー誕生の意味を考える

大島和人

表に出ていなかった日本バスケのお金事情

Bリーグは、プロ野球、Jリーグに次ぐプロリーグに近づいている 【(C)B.LEAGUE】

 旧リーグ時代の2015−16シーズンは83億円だったクラブの合計営業収入も、Bリーグ初年度(16−17シーズン)が150億円、17−18シーズンは195億円と右肩上がり。5月に終了した18−19シーズンはまだ決算が確定していない段階だが、10%増の215億円が見込まれている。

 19年6月期の協会やリーグを含めたバスケの市場規模は見込みが303億円。Bリーグ開幕時に20−21シーズンの達成目標と掲げていた「入場者数300万人/市場規模300億円」も、市場規模については2年前倒しで達成となった。入場者数もB3を含めて277万人と、達成に近いところまで到達している。

 B1日本人選手の基本報酬はそれに合わせて、16−17シーズンの820万円から1310万円と、2年で約160%の増加を果たした。1000万円以上の割合も17.3%から47.2%と3倍近く増えている。

 一般的に選手に限ると営業収入の30%程度、コーチやスタッフを含めて40〜45%程度がプロスポーツにおける人件費比率の基準値だ。17−18シーズンの千葉は9000万円近い経常利益をあげており、経営の健全性も確保されている。

 富樫がbjリーグの秋田ノーザンハピネッツでプロのキャリアをスタートさせたのは13年2月。モントローズ・クリスチャン高校を卒業したばかりの彼に与えられた報酬は、半年間で100万円だった。

 167センチの1億円プレイヤーはこう口にする。

「今のレベルのプレイヤーになっていたとしても、Bリーグになっていなければ(1億円には)到達しなかったと思う。プロ野球、Jリーグに次ぐBリーグとずっと言ってきましたが、それに近づいている」

 彼は金額の公表に踏み切った理由をこう述べる。

「未来の子どもたち、これからバスケを始める、一生懸命頑張っている子どもたちに何か夢を与えられたらと思い、この発表に踏み切りました。今まではあまり日本バスケのお金のことは、表には出ていなかった。でも職業として、高校生や大学生が将来について考えるとき、給料は当たり前のように全員が考える問題。今まではバスケ選手がどれくらいもらっているか、本当に分からない状況だったと思う。自分がこうやって発表して、夢のあるリーグだと思ってもらえたらうれしい」

 しかし大河チェアマンが「1億円プレイヤーが出たことは始まり」と強調するように、本当のゴールはまだ先にある。Bリーグの平均報酬はまだ中国や韓国のプロリーグと比べて高いと言い得るレベルにはない。国内の比較で考えてもプロ野球の3分の1、Jリーグの半分ほどという水準だ。NBAに至っては1年目の選手の最低年俸(18−19シーズン)が約84万ドルで、日本円にして9000万円を超える金額だ。

 ただし3年目の「途中経過」としては悪くない。バスケ界の「現在地」を示す数字として、少年たちに夢を与える目標として、1億円はBリーグと千葉が発する前向きなメッセージになった。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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