アーモンドアイ“5馬身ロス”の発馬不利 福永磨いた新名刀インディチャンプ会心V
福永会心の有言実行騎乗、調教師も絶賛
コンビ初戦からインディチャンプの素質を感じ取っていたという福永、完ぺきなレースを展開した 【写真:中原義史】
「パドックの周回中に福永君がこんなレースをしたいと言っていたんですが、その通り、有言実行のレースになりましたね」
そう言って、ジョッキーの騎乗ぶりを絶賛したのは音無調教師。福永にとっても思い描いた通りの会心の騎乗だったという。
「枠順の並びを見て、3列目のインから行きたいと思っていました。厳しい相手でしたけど、勝つためにはどうしたらいいかを考えて、自分で出した答えの乗り方を実行できて勝つことができた。大きな自信になりました」
そして、この騎乗は、単に思いついた作戦がたまたまハマったというわけではない。1年かけて育んできたインディチャンプとの信頼があったからこそ、できた芸当なのだ。福永とインディチャンプがコンビを組んだのは、ちょうど1年前のこの時期。目標としていたNHKマイルカップの出走権利を逃し、イチから出直しを図った直後のことだった。ただ、その仕切り直し初戦も2着に敗れたわけだが、福永はこの初コンタクトからすでにインディチャンプが持つ大きな可能性を感じ取っていたという。
「一番はバネですね。瞬発力と言っても色々とあると思いますが、一瞬の脚というか、そういう武器を持っている馬は大きい舞台でも勝負ができる。そういう馬だと自分の経験則の中から感じました。でも、末脚というのはその馬が生まれ持ったもので、磨いていかないと光らない。すぐに発揮できるものではないんです」
1年にわたる英才教育、花開いた瞬発力
レース中は「自分でも驚くほど冷静だった」という 【写真:中原義史】
「本当は今日もスタートは良くなかったんです。二の脚でポジションを取りにいったんですが、それでもリラックスしていたのは前走である程度の位置を取りに行く競馬を経験させたからだと思いますね。うまく脚をタメることができて、いい形になりました」
そこから放たれた32秒9の瞬発力でアエロリットをはじめ先行勢をまとめて斬り伏せ、返す刀でアーモンドアイを完封。確かに上位2強にアクシデントがあった分、恵まれた面もあるだろう。しかしそれでも、これほどまでに完ぺきなレースを見せられては文句のあるはずがない。新マイル王の誕生だ。
男子三日会わざれば……秋また一段とパワーアップへ
マイルの絶対王者へ、秋はマイルCSが目標となる 【写真:中原義史】
「この短期間にすごく変わってきましたね。前走後に出した2週間の放牧の後、違う馬になって帰ってきました。この1年でも一番変わったのはトモ(後肢)のハリ。今日に関しても、馬体重は前走と同じなのにすごく引き締まっていて、トモははちきれんばかりでしたから。秋にはまた違った形でのいい馬になって帰ってくると思います」
男子三日会わざれば……という故事があるがまさにその通りで、短期間での変貌ぶりについては「前走くらいから馬体が良くなってきましたし、まだ良くなっていくなと感じさせてくれます。楽しみですし、夢が限りなく広がる馬だと思いますね」と、福永も目を細めている。
アーモンドアイという現在の日本競馬の象徴は敗れたが、代わって同じ勝負服から絶対マイル王候補がこうして出現した。思わず「祝え!」と、あのライダーのように言いたくなる、そんな王者として突き進む姿を期待したい。音無調教師によると、今後もマイル路線にこだわり、秋はマイルチャンピオンシップを目標にするとのことだ。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)