“二世Jリーガー”はこうして生まれた 広瀬陸斗と父・治さんの絶妙な距離感

藤井雅彦
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息子を思ってコーチ就任を断っていた真実

今季より横浜F・マリノスに加入した広瀬陸斗。成長の過程には父親のさりげない助言があった 【佐野美樹】

 自分自身の力で浦和レッズのジュニアユースに進んだ広瀬陸斗だったが、順風満帆にはいかない。中学1年生から2年生に差し掛かるころが成長期と重なり、心身のバランスを崩しがちになってしまう。それにいち早く気付いたのは、自身もプロサッカー選手として活躍した父・治さんだった。

「試合を観に行ったときにすぐ気付きました。足が速い、遅いの問題ではなく、スムーズにスピードに乗れていなかった。本人は分かっているようで分かっていないような感じでしたけど、『病気ではないから心配するな』と話しました。時間が解決してくれる問題ですから」
 治さんは現役引退後、浦和のジュニアユースコーチ、ユースコーチ、ユース監督を歴任し、陸斗がジュニアユースの一員になった時期にはトップチームのコーチを務めていた。過去の経験から育成年代の選手が抱える悩みは容易に想像でき、それは息子も例外ではなかった。

 陸斗自身は「自分ではあまり深く意識していなかった」と振り返るが、「父さんの一言のおかげで深く考え過ぎなかったのかもしれません」と、感謝を口にする。当初は練習試合の1本目、2本目ではなく3本目にようやく出場する難しい立場だったが、学年が上がるにつれて、父親譲りのサッカーセンスと持ち前の身体能力を武器に頭角を現していく。

 このころ、治さんはある決断を下していた。
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著者プロフィール

1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、フリーとして活動を開始。2006年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の横浜F・マリノス担当を務め、現在はwebマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』の責任編集としてチームに密着し続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』(ワニブックス)、書籍の執筆・構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』(ワニブックス)、『サッカー・J2論』(ワニブックス)がある。

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