岡崎が激白 失いかけた“点取り屋魂” 「チャレンジすることすら忘れている」
「ティンカーマン」に軽視されたレスター2年目
レスターを退団することとなった岡崎 【Getty Images】
2016年9月14日(現地時間、以下同)に行われたクラブ・ブルージュ対レスターのチャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ初戦。前年度にプレミアを制したレスターは、欧州最高峰の舞台に参戦していた。
そもそも、奇跡のプレミア制覇を成し遂げたレスターにとって、CLに参戦すること自体がボーナスだった。筆者は当然、前年度の優勝メンバーでスタメンを編成するものと思っていた。選手のモチベーションを維持する意味でも、前シーズンの主力をピッチに送り出すべきだと考えていた。
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試合後、岡崎は不満と失望を隠せなかった。
「CLの初戦で、まさかのベンチ外っていう。あり得ないと言ったらあり得ない。(昨季は)自分がずっと試合に出ていた。準備もしていましたし、試合に出たい気持ちは本当に強かった。(メンバーから)外れたことが分かった瞬間は、本当に落胆しました」
その前から、岡崎は多少なりとも嫌な予感がしていたという。「チームの調子が上がらないときは、真っ先に変えられる立ち位置」と自身の立場を常々語っていたように、ラニエリ監督の下で絶対的な存在になっていないとの認識があったからだ。実際はプレッシングサッカーで不可欠な存在だったが、「ティンカーマン(下手な修理工)」とやゆされるラニエリの見解は違った。かくして、岡崎の予感は、CL初戦という晴れ舞台で現実のものになった。
「そういうふうに見られていると、再認識した。もし、チームが悪くなったら自分を戻すという考えもあるだろうし。言ってしまえば、いいように使われているポジション。あらためて、自分の状況は微妙な立場だなと感じた」(岡崎)
理想像に最も近づいた在籍3季目
レスター在籍3季目は開幕2試合で2ゴールを奪う好スタートを切った 【写真:アフロ】
結局ラニエリは、17年2月に成績不振による降格危機で更迭された。しかし、コーチのクレイグ・シェークスピアが監督に昇格しても、岡崎の立ち位置は劇的には変わらなかった。
シェークスピア監督は「原点回帰」を合言葉に、プレッシングサッカーの中心的存在だった岡崎を先発メンバーに呼び戻した。それでも、岡崎はストライカーとして全幅の信頼をつかめなかった。例えば、アトレティコ・マドリーとのCL準々決勝。ホーム&アウェーの2試合連続で、岡崎はハーフタイムに交代を命じられたのだ。理由は戦術的交代だったが、ゴールが必要な状況にもかかわらずベンチに引っ込められた。試合後、岡崎は「何度もこういう経験をレスターでしているけれど、またこういうふうになるんだなと。戦術的な交代というのは分かっていても、受け入れられない部分がある」と、やりきれなさを口にした。在籍2季目も、さらなる飛躍は遂げられなかった。
そんな岡崎が、自分の思い描く理想像に最も近づいたのが、在籍3季目のシーズン前半戦だった。岡崎は開幕2試合で2ゴールを奪う好スタートを切った。ポジションは4−2−3−1のトップ下。精力的に守備をこなしながら、前線に駆け上がってゴールを狙うプレースタイルに磨きをかけていた。
このプレースタイルこそが、プレミアリーグで生き残るための最善の道であると、岡崎は強く思っていた。「個の力」が化け物クラスの選手が集うイングランド。その中で、驚異的なスピードや高身長があるわけでもない岡崎が、1トップを務めるのは難しい。それゆえ、特性が最も生かせると考えたのは2トップの一角やトップ下であり、センターフォワードのやや後方からゴールを狙うセカンドストライカーなら、マークの少ないエリアに飛び出していける。そして、このプレースタイルで二桁ゴールを奪えば、レスターでも絶対的な存在になれる──。岡崎は、そう考えていた。
守備をこなしながら、二桁ゴールをたたき出す。それは極めて難易度の高いハードルのように思えたが、シーズン前半戦の岡崎は絶好調だった。12月13日の第17節サウサンプトン戦で2ゴールを挙げ、ついにプレミアリーグ自己最多となる6ゴールまで得点数を伸ばした。当然、二桁得点への期待は高まったが、不運なことに、ここから岡崎は相次ぐけがに悩まされることになる。2月に膝を痛めて3試合を欠場すると、4月に足首を負傷してラスト5試合を休んだ。結局、後半戦にゴールを積み上げることはできなかった。