立川理道「チームを引っ張っていきたい」 “練習生”からラグビーW杯出場へ

斉藤健仁

サンウルブズで初出場「ゲインラインのバトルで前に」

ラグビー日本代表としてワールドカップ出場を目指す立川理道(中央) 【斉藤健仁】

 扉はほとんど閉じていたかに思われた。だが自らの手で道を切り開いた。
 29歳のベテランCTB立川理道が3月23日、シンガポールで行われたサンウルブズとライオンズの試合に今年初めて出場。サンウルブズが先制したが、相手のフィジカルとセットプレーに圧を受けて24対37で逆転負けを喫してしまった。

 昨年7月以来のサンウルブズのジャージを身にまとった立川はトニー・ブラウンHC(ヘッドコーチ)の先発起用に応えて80分、ややミスもあったが及第点となるパフォーマンスを見せた。

 元ニュージーランド代表SOだった指揮官が「(パフォーマンスは)良かった」と称えたように、立川はボールを持っては前に出続けた。ボールキャリーの回数は12回と両チーム合わせてトップ。チーム方針として取り組んでいるオフロードパスやショートパス、裏のラインへのパスなど持ち前のスキルも見せた。

 昨年11月の日本代表戦に出場できず、久しぶりの高いレベルの試合だったこともあり、立川本人は「まだまだ納得のいくパフォーマンスはできなかったですし、チームに貢献できなかったので少し悔いが残る」と反省点を口にしたが「(攻守の)ゲインラインのバトルでしっかり前に行けるように努力していきたいし、それが日本代表につながるアピールポイントなのでやっていきたい」と前を向いた。

昨秋の日本代表に招集されず

現在の日本代表ではインサイドCTBとしての活躍が求められている 【斉藤健仁】

 実は、この試合は立川にとって大きな意味があった。2015年ワールドカップでは3勝を挙げた日本代表に大きく貢献し、サンウルブズにも2016年度から参加していた。2017年の日本代表では共同主将にも選ばれた。文字通り日本ラグビー界を引っ張っていた立川だが、昨年11月のテストマッチ(国際試合)では日本代表メンバーにその名はなかった。

 CTBではラファエレ ティモシーが定位置を確保しており、中村亮土、若手の梶村祐介の台頭や、SH流大、FL姫野和樹らのリーダーシップが育ってきていた影響があった。

 ジェイミー・ジョセフHCは立川を選ばなかった意図を「彼の最近のパフォーマンスが我々のレベルまで達していなかった。12番としてのフィジカル、ディフェンス力が不足している。苦渋の決断だが、厳しいタフな判断は自分の任務であり、日本ラグビーのためでもあると思っています。トップリーグなどでの活躍で、彼が逆境を跳ね返してくれると信じています」と説明した。

 日本代表の前指揮官であるエディー・ジョーンズHCは立川を10番と12番として起用していたが、ジョセフHCは立川を現在はインサイドCTBとして見ている。ジェイミー・ジャパンではFWのシェイプに12番を立たせて、その代わりにFWを外に立たせる戦術を採用しており、インサイドCTBには攻守にわたってFWに近いフィジカルも求められていた。

立川「いつ呼ばれてもいいように準備」

サンウルブズvs.ライオンズでWTBファンデンヒーファー(中央)をフォローする立川 【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップまで1年を切った中で、代表落ちとなった立川は所属するクボタでも12番としてリーグ戦、カップ戦で試合に出続けてアピールを続けた。だが、過去3年招集され、主将も務めた経験のあるサンウルブズに呼ばれなかった。さらに2月2日、トップリーグ選抜の一員としてフランスの強豪クレルモンとのチャリティーマッチにも出場したが、2月4日から始まった日本代表候補合宿にも名前がなかった。

 チャリティーマッチ後、立川は「ジェイミーが思っているパフォーマンスに達していないので、(それを)受け止めてやっていきたい。これからは(試合がなく)アピールすることは難しいが、何があるかわからないので、いつ(日本代表やサンウルブズに)呼ばれてもいいように準備したい」と声を絞り出すように話すのが精一杯だった。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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