立川理道「チームを引っ張っていきたい」 “練習生”からラグビーW杯出場へ

斉藤健仁

ジャージも違う「練習生」として合宿へ

ジャージの違う「練習生」から再びチャンスをつかんだ 【斉藤健仁】

 実質的に立川にアピールする場がなくなった。2019年ワールドカップへの道はほほ閉ざされてしまったかに思われた。それでも立川は少しリフレッシュをした後、トレーニングを続けた。似たような境遇にあり、家族ぐるみの付き合いをしているNo.8アマナキ・レレィ・マフィと食事に行って励まし合ったりもしていたという。

 そんな中、吉報は思ったよりも早くやってきた。中村が休養に入り、CTBシェーン・ゲイツが負傷した影響で、立川は3月5日から日本代表候補に練習生で招集された。

 実質3日しかない状況で立川は「また代表の活動に参加できるチャンスをもらってうれしいです。早く戻れたことが自分の中でプラスになる。形としては練習生ですし、ジャージも違ってセレクションの中では一番下のレベルだと思いますが、主将やリーダーといった背負うものはないですし、いろいろな人のためにプレーしたいという気持ちが強い。目の前のことをしっかりやり切れば」と練習に集中していた。

サンウルブズで「少ない出場時間でもアピールしていきたい」

ライオンズ戦で激しいディフェンスを見せる立川 【写真:ロイター/アフロ】

 その結果、3月10日から始まった沖縄合宿のメンバーに選ばれ、晴れて日本代表候補となり、サンウルブズの共同主将のTBマイケル・リトルが脳しんとうに遭ったことで、日本代表候補合宿から立川がサンウルブズに招集されたというわけだ。

「(置かれている立場は)セレクションでもまだまだ低いと思うので、今いる立場でパフォーマンスを出すことが大事。ただディシプリン(規律)の部分や勝ち切れないという部分で、自分のできることはコミュニケーションで周りの選手を動かせることだと思いますし、その経験を生かしてチームを引っ張っていきたい。ただケガ人が戻れば自分の立場がどうなるかわからないので、少ないチャンス、少ない出場時間でもアピールしていきたい」(立川)

目標は「ワールドカップで勝つこと」

日本代表としてワールドカップ出場、勝利を目指している 【写真:アフロ】

 迎えた3月23日のライオンズ戦は、冒頭の通り、特に前半はアタックでは見せ場を作った。しかし、10対22で迎えた後半20分、ディフェンスラインが乱れていた影響もあるが、CTBライオネル・マプーに意識がいってしまい、WTBアピウェ・ディアンティの突破を許し、失トライに結びついてしまった。また個人的にはもう一段階、タックル、フィジカルを強くしてほしいとも思う。

 それでも全体的なパフォーマンスが良かったこと、まだリトルが復帰しなかったこともあり、立川はオーストラリア遠征のメンバーに選出された。ただジョセフHCの信頼が厚いラファエレ、昨年11月の日本代表に続きサンウルブズでも良いプレーを続けている中村といったライバルに負けないような、強い印象を与えるプレーを続けないといけない立場は変わらない。

 主将経験があり日本代表55キャップを誇る立川は、自身のプレーに目を向けつつも「ワールドカップの最終メンバーに残ることが目標ではないですし、しっかりと(ワールドカップ)勝つことが大事。そこに向けて、置かれている立場で自分をアピールすることが重要」と、あくまでもチームとしてワールドカップで勝利を重ねることを念頭に置いている。

 2019年ワールドカップは自国開催だからこそ、注目され、日本代表選手には大きなプレッシャーも出てくる。2016年以降、クボタだけでなく、日本代表、サンウルブズでも主将を務めてきた立川だからこそ、その重圧の中でも正確な判断、的確なプレーをしてくれるはずだ。その経験値はチームと勝利に必要なワンピースになると信じている。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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