つなぎ、走り、闘う。魅力満載の横浜FM めまぐるしい鳥栖との攻防は必見!
魅力的なフットボールを展開する横浜FM
横浜FMはいま、最も魅力的なフットボールを展開するチームのひとつだ 【(C)J.LEAGUE】
じゃあ、3月最後の金曜日には何があるのか。
横浜F・マリノスとサガン鳥栖の一戦だ。これがなかなかに興味深い。何しろ、ホームの横浜FMはいま最も魅力的なフットボールを展開するチームのひとつ。そこにJ1屈指の大駒フェルナンド・トーレスを擁する鳥栖が殴り込みをかける。
首都圏在住のサッカーファンにとって「生トーレス」を拝める格好の機会――と言いたいところだが、出場の可否は不透明だ。第4節のジュビロ磐田戦で右足を痛めて負傷交代し、今節の出場が白紙の状態にあった。果たして、ピッチに立てるのかどうか。
「生トーレス」を拝める格好の機会も、負傷により出場は微妙な状況 【写真:フォトレイド/アフロ】
バルサのカンテラ(下部組織)育ちだけに基礎技術は確か。1人で局面を打開する力も備えている。つまりは「違いをつくる」タレントだ。実際、磐田戦で途中出場し、値千金の決勝点をマーク。開幕から3連敗とつまずいていた鳥栖に、待望の初勝利をもたらしている。
過去2試合はいずれもベンチスタートだったが、そろそろスタメンで登場してもいい頃だ。そうなれば、先達トーレスとのホットラインは見ものだろう。もちろん、ピンでも何かをやってのける期待感が十分にある。
注目すべき横浜FMの「小さな巨人」たち
敵を一方的にやり込める「ドS体質」の横浜FM。攻めて、攻めて、攻めまくる 【(C)J.LEAGUE】
よくつなぎ、よく走り、よく闘う――横浜FMはそういうチームだ。数字を見ても分かる。1試合平均のボール保持率はヴィッセル神戸に次ぐリーグ2位の58.9%。おまけに1試合平均の走行距離も2位、スプリントの回数に至ってはトップだ。人もボールもよく動くわけである。
しかも、休まず攻め続け、敵に息つく暇を与えない。見ている側もめまぐるしい攻防にぐいぐい引き込まれ、あっという間に時計の針が進んでしまう。文字どおり、少しも目が離せないチームなのだ。トーレスのような大駒こそ見当たらないが、メンバーは粒ぞろい。アクセル全開でプレーしながら、つまらぬ事故(ミス)が少ないのもそのためである。ボール扱いの達者なタレントがひしめいている。
三好康児(左)は167センチと小柄ながら、機敏な動きで守備者を手玉に取っていく 【(C)J.LEAGUE】
尖っているのはメンバー編成だけではない。戦術面もそうだ。基本布陣は4−3−3(4−1−2−3)とも言われるが、その実は2−3−2−3。アルファベットに変換すれば『WW』に近い。
両サイドバック(SB)がアンカーの脇を固める独特の位置取りは、名将ペップ・グアルディオラの率いるマンチェスター・シティ(イングランド)のそれだ。敵の逆襲を浴びた場合、アンカーの両脇に生じるスペースは守備側の泣きどころになるが、左右のSBがあらかじめ中に絞ることで、そのリスクを最小化している。
おまけに中盤の人数が増えるぶん、セカンドボールの奪い合いでも優位だ。失ったボールの即時奪回を試みるカウンタープレスがハマりやすいのも、前のめりの位置取りによる効果が大きい。人材はもとより、敵陣でゲームを進めるための仕組みも整っているわけである。