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フライデーナイトJリーグ

つなぎ、走り、闘う。魅力満載の横浜FM
めまぐるしい鳥栖との攻防は必見!

魅力的なフットボールを展開する横浜FM

横浜FMはいま、最も魅力的なフットボールを展開するチームのひとつだ
横浜FMはいま、最も魅力的なフットボールを展開するチームのひとつだ【(C)J.LEAGUE】

 2019年、金曜夜のお楽しみと言えば、J1リーグだ。今月最初の金曜日(3月1日)には、J1王者の川崎フロンターレとアジア王者の鹿島アントラーズがあいまみえる好カードが開催された。


 じゃあ、3月最後の金曜日には何があるのか。


 横浜F・マリノスとサガン鳥栖の一戦だ。これがなかなかに興味深い。何しろ、ホームの横浜FMはいま最も魅力的なフットボールを展開するチームのひとつ。そこにJ1屈指の大駒フェルナンド・トーレスを擁する鳥栖が殴り込みをかける。


 首都圏在住のサッカーファンにとって「生トーレス」を拝める格好の機会――と言いたいところだが、出場の可否は不透明だ。第4節のジュビロ磐田戦で右足を痛めて負傷交代し、今節の出場が白紙の状態にあった。果たして、ピッチに立てるのかどうか。

「生トーレス」を拝める格好の機会も、負傷により出場は微妙な状況
「生トーレス」を拝める格好の機会も、負傷により出場は微妙な状況【写真:フォトレイド/アフロ】

 出場不可なら鳥栖にとっては痛手だが、頼みの切り札はまだ残っている。新助っ人のイサーク・クエンカだ。かつてスペインの強豪・バルセロナに在籍したスペイン人のアタッカーは、ベテランの域に達したトーレスとは違い、27歳の働きざかりである。


 バルサのカンテラ(下部組織)育ちだけに基礎技術は確か。1人で局面を打開する力も備えている。つまりは「違いをつくる」タレントだ。実際、磐田戦で途中出場し、値千金の決勝点をマーク。開幕から3連敗とつまずいていた鳥栖に、待望の初勝利をもたらしている。


 過去2試合はいずれもベンチスタートだったが、そろそろスタメンで登場してもいい頃だ。そうなれば、先達トーレスとのホットラインは見ものだろう。もちろん、ピンでも何かをやってのける期待感が十分にある。

注目すべき横浜FMの「小さな巨人」たち

敵を一方的にやり込める「ドS体質」の横浜FM。攻めて、攻めて、攻めまくる
敵を一方的にやり込める「ドS体質」の横浜FM。攻めて、攻めて、攻めまくる【(C)J.LEAGUE】

 とはいえ、いまの横浜FM相手にそうやすやすと仕事ができるかどうか。よほどのアクシデントでもないかぎり、この試合の主導権はホームチームの手中にあるはずだ。何しろ、敵を一方的にやり込めるドS体質。キックオフから攻めて、攻めて、攻めまくる。ボールを持ったら前へ。いや、相手ボールでも前へと突き進んでいく。苛烈(かれつ)なプレッシングでボールを奪い、一気に敵のゴールへ迫るのだ。ハイテンポな攻守にのみ込まれた相手はサンドバックにされてしまう。


 よくつなぎ、よく走り、よく闘う――横浜FMはそういうチームだ。数字を見ても分かる。1試合平均のボール保持率はヴィッセル神戸に次ぐリーグ2位の58.9%。おまけに1試合平均の走行距離も2位、スプリントの回数に至ってはトップだ。人もボールもよく動くわけである。


 しかも、休まず攻め続け、敵に息つく暇を与えない。見ている側もめまぐるしい攻防にぐいぐい引き込まれ、あっという間に時計の針が進んでしまう。文字どおり、少しも目が離せないチームなのだ。トーレスのような大駒こそ見当たらないが、メンバーは粒ぞろい。アクセル全開でプレーしながら、つまらぬ事故(ミス)が少ないのもそのためである。ボール扱いの達者なタレントがひしめいている。

三好康児(左)は167センチと小柄ながら、機敏な動きで守備者を手玉に取っていく
三好康児(左)は167センチと小柄ながら、機敏な動きで守備者を手玉に取っていく【(C)J.LEAGUE】

 見逃せないのは、ホビットを思わせる「小さな巨人」たちだ。左右の翼を担うマルコス・ジュニオールと仲川輝人、インサイドMFの三好康児、アンカーの喜田拓也は、いずれも170センチ以下だが、小回りの利いた機敏な動きで大柄な守備者を手玉に取っていく。小よく大を制す――といったところか。


 尖っているのはメンバー編成だけではない。戦術面もそうだ。基本布陣は4−3−3(4−1−2−3)とも言われるが、その実は2−3−2−3。アルファベットに変換すれば『WW』に近い。


 両サイドバック(SB)がアンカーの脇を固める独特の位置取りは、名将ペップ・グアルディオラの率いるマンチェスター・シティ(イングランド)のそれだ。敵の逆襲を浴びた場合、アンカーの両脇に生じるスペースは守備側の泣きどころになるが、左右のSBがあらかじめ中に絞ることで、そのリスクを最小化している。


 おまけに中盤の人数が増えるぶん、セカンドボールの奪い合いでも優位だ。失ったボールの即時奪回を試みるカウンタープレスがハマりやすいのも、前のめりの位置取りによる効果が大きい。人材はもとより、敵陣でゲームを進めるための仕組みも整っているわけである。

北條聡

週刊サッカーマガジン元編集長。早大卒。J元年の93年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。以来、サッカー畑一筋。昨年10月末に退社し、現在はフリーランス。著書に『サカマガイズム』、名波浩氏との共著に『正しいバルサの目指し方』(以上、ベースボール・マガジン社)、二宮寿朗氏との共著に『勝つ準備』(実業之日本社)がある。