アジア杯準優勝の厳しい現実 “日本らしさ”の追求は3年後に吉と出るか
南野のゴールで一矢報いるも……
後半24分には南野のゴールで一矢報いたが、これが精一杯だった 【写真:ロイター/アフロ】
確かに前半12分の失点は、いささかアンラッキーなものであった。しかしそれ以上に気になったのが、日本の試合の入り方である。とりわけ攻撃面において、大迫にボールがまったく収まらなかったのはなぜか。大迫は試合後、「相手が4バックと5バック、どちらで来るか分からない状況の中で後手を踏んでしまった」と語っている。また森保監督も、相手が5バックで来る可能性も想定していたものの、「試合が始まってからミスマッチが起こる中、そこの噛み合わせがうまくいかない中で序盤に失点してしまった」と、前半の段階で修正が利かなかったことを認めた。
後半のカタールは、引き気味の状態からカウンター狙いの姿勢に入ったため、次第に日本は反攻の体勢を整えていく。後半17分には、原口に代えて武藤嘉紀を投入。そして24分には、ようやくビッグチャンスが訪れる。右サイドの酒井のバックパスを受けた塩谷が、相手DFを背負った大迫に縦パスを入れ、ワンタッチで落としたところに南野が侵入。すぐさまカタールGKサード・アルシーブが詰めるも、一瞬早く南野がボールを浮かして見事にゴールに流し込む。609分間にわたって守られてきた、カタールの無失点記録が途切れた瞬間。しかし日本の枠内シュートは、このゴールを含めてたった2本であった。
その後、同点ゴールを求めてさらに攻勢を強める日本であったが、再びカタールの分厚い守りに阻まれてしまう。そうこうするうちに後半36分、セットプレーからの守備の際、カタールの選手たちが吉田のハンドをアピール。VAR判定の結果、PKが認められるとアクラム・アフィフがこれを冷静に決めて、カタールが大きな3点目を挙げる。日本ベンチは直後に伊東純也、さらに後半44分に乾貴士をピッチに送り込むも(交代は塩谷と南野)、2点差はあまりにも遠かった。5分間のアディショナルタイムを経て、ついにタイムアップ。カタールのアジアカップ初優勝が決まった。
カタールの躍進が日本に突きつけたもの
新たな歴史を作ったカタールは、アジアでも「ヨーロッパメソッド」の強化ができることを証明した 【写真:ロイター/アフロ】
さて、9カ国目のアジアチャンピオンとなったカタール。チームを率いるフェリックス・サンチェス監督は「われわれは歴史を作った。この結果は、われわれが成長するためのステップのひとつであり、2022年に向けていい準備をしなければならない」と語っている。今大会のカタールについては、さまざまな場面で彼らの強さを見せつけられることになった。とりわけ私が感服したのは、これまで最高成績がベスト8の経験しかなかった彼らが、7試合という長丁場をコンスタントに勝ち抜き、最後の決勝も余力をもって勝ちきったことである。
もっとも、長期的な強化方針で今大会に臨んだカタールに対し、日本は新体制の立ち上げから半年ほどしかたっていない。それでも決勝進出を果たしたことについては、一定の評価をすべきであろう。試合後の会見で、森保監督は「アジアカップという厳しく難しいゲームを7試合できて、1試合ごとにいろいろな戦い方をしながら、チームの力としてステップアップできたと思います」と語っている。「アジア王者奪還」という目標は掲げていたものの、このチームにまず課せられていたのは、若い選手に経験を積ませながら世代交代を促進させること。そのミッションについては、十分にクリアしたと言えるのではないか。
ただし今回の敗戦が、いくつかの厳しい現実を日本に突きつけたという事実は心に留めておきたい。アジアの勢力図に、変化の兆しが見られること。育成のアドバンテージは、もはや日本の寡占ではないということ。そして時間とお金をかければ、中東の小国でもヨーロッパのメソッドによる強化が可能であること。いずれもカタールのアジア制覇から明らかになったことである。そんな中、日本が今後の強化の方針として打ち出したのが、「日本らしさ」を追求するジャパンズ・ウェイ。日本とカタール、それぞれベクトルがまったく異なる強化方針が、3年後のW杯でどのような結果をもたらしているのか。今から気になるところである。