指揮官交代は韓国野球にどう影響を及ぼす? 宣銅烈前監督には同情の声も
アジア大会で金メダルを獲得した直後に
2007年の北京五輪アジア予選を前にした金卿文監督(写真右)と宣銅烈投手コーチ(当時) 【写真:ストライク・ゾーン】
金監督は2008年の五輪・北京大会で韓国代表を率いて金メダルを獲得。それ以来の代表監督就任となる。任期は3大会ぶりに野球が復活する20年の東京五輪までだ。
「五輪で実績を残した監督の再就任」
そこだけを切り取れば何の問題もない人事に見える。しかし、昨秋の時点では年明けに新たな代表監督を選ぶことになるとは誰も思っていなかった。なぜなら東京五輪までを任期とする監督が既にいたからだ。
17年7月、代表チームを長期的に率いる初の専任監督に宣銅烈(ソン・ドンヨル)前KIAタイガース監督が就任した。現役時代、日韓で活躍した球界のレジェンドスターであり、指導者としても実績のある宣監督は、初代監督にうってつけの人物だった。
宣監督が率いた韓国代表は金メダル獲得が宿命づけられた昨夏のアジア大会を見事制覇。それにより兵役義務が残る9選手は免除恩恵を受けた。
大仕事を終えた宣監督は昨年9月、つかの間の休息をとった。慣れ親しんだ土地である名古屋で、気の置けない仲間と過ごす穏やかな時間。そんな時に、宣監督を腹立たせるニュースが飛び込んできた。ある市民団体がアジア大会での兵役義務者の選手選考に不正があったとして、宣監督が請託禁止法に違反するとしたからだ。請託禁止法とは、不正な請託や金品等の収受禁止に関する法律である。それを受けて、国会議員が宣監督に国政監査への証人出席を求めるという異常な事態となった。
これを日本に置き換えるならば、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を制した王貞治監督や原辰徳監督が、何らかの事案で国会に参考人として呼ばれるようなとんでもない状況だ。
危機的状況で抜てきされた新監督
さらに自分を守ってくれるはずのリーグコミッショナーが「代表チームに専任監督は必要ない」と発言し、宣監督は11月に代表監督を辞することを決めた。
代表監督が在任中に辞任するという想定外の事態に直面したKBOは、金始眞(キム・シジン)元ロッテ監督を委員長とする代表チームの技術委員会を構成。宣前監督に代わる代表監督の人選に入った。
将来を見据えた新監督選びであれば世代交代を視野に入れた人選もあったが、球界の危機的状況下で任せられる人物は限られた。複数の候補者が挙がるも、その一番手となったのは北京五輪で韓国を金メダルに導いた金卿文監督だった。
金監督は昨季6月にNCの監督を退任。それ以来の公の場となった就任会見で多くの取材陣を前に胸を抑え、「グラウンドを離れてから7カ月ぶりなのでドキドキする」と心境を吐露。「11年ぶりに代表監督として再びあいさつすることになった。プレミア12、東京五輪という大きい大会を控え、代表チームの監督という立場に重責を感じる」と話した。
さらに「代表チームは言葉通り、韓国を代表する象徴であり顔だ。11年前の北京五輪の栄光を取り戻すためには野球ファンの絶対的な支持が必要だと思う。11年前の夏の夜に感じたような喜びを再び分かち合えるようベストを尽くす」と語った。