明治を日本一に導いた分析と準備 「部員126名の努力が最高の形に」
決勝戦用のサインプレーが成功
豪快なランで何度もチャンスをつくったWTB高橋 【斉藤健仁】
前半22分もラインアウトモールで一度押し込んだ後で、SH福田がボールを持ち出して、そこに内側1人、外側2人が走り込み、クロスでパスを受けたWTB高橋汰地(4年)がトライ。この「タンク・エックス」と名付けられたサインプレーは決勝のため3つほどに準備したプレーのうちの一つで、見事に大舞台で決めた。
プレッシャーをかけ続けたラインアウトで圧倒
攻撃、ラインアウトなどあらゆる局面で活躍したFL井上 【斉藤健仁】
「片倉康瑛はラインアウトのこだわりが強い選手。片倉がプレッシャーを与えて武器になった」と田中監督は2年生LOを称えた。「分析好き」と自負する片倉は、メンバー外の4年生らと天理の映像のすべてに目をやった。190センチと長身ながら、スピードに長けた片倉が真ん中に立ち、「ムーブ系が多い。僕には投げてこない」という想定のもと、相手のムーブにより、前か後ろに動いて味方選手を素早く、高く持ち上げてプレッシャーをかけた。
後半22分、明治大FW陣が相手ゴール前で奮闘し、最後はHO武井日向(3年)が中央にトライを挙げたが、起点は、相手ラインアウトのミスを誘発したことだった。結局、モールからの失トライは1。No.8マキシへのロングスローのサインもあったが、試合を通して天理大のラインアウトを封じたことは大きかった。
「自分たちにフォーカスしたゲームを」
就任1年目で最高の結果を残した田中澄憲監督 【斉藤健仁】
その言葉通りの試合を見せた。決勝ということでリスクを考えて、自陣22m内からランすることはなく、FB山沢京平(2年)のロングキック、中盤ではSH福田のハイパント、CTB森のキックでスペースを狙う。ディフェンス、ラインアウトでプレッシャーをかけていたこともあり、エリアマネジメントで優勢に立ってあまり22m内に入らせないことに成功した。
相手の長所を消して自分たちの長所をどう出すか、といった点では明治大に大きく分があり、天理大は準決勝の帝京大戦でできたことが、決勝では相手のプレッシャーの前にできなかったと言えよう。天理大・小松節夫監督の「うちは帝京大戦が一番のゲームで、明治大は決勝が一番のゲームだったかもしれない」という言葉が的を射ている。
「明治のプライドを持って戦えたのが勝因」
大学選手権に入ってからもチームは進化を続けた 【斉藤健仁】
田中監督が昨季1年間で「本当に日本一を目指す集団になる」とマインドを変えて、今季はコーチ陣とともに緻密なラグビーを落とし込み、大学選手権になってから選手が監督らの期待に応えてさらなる進化を遂げた。
胴上げされても「恥ずかしかった」と田中監督はあまり喜びをあらわにせず、「ここで終わりではない。来季は追われる立場になる」とすでに先を見据える。平成最後に強い明治大が戻ってきた。