青学大が情報戦でも先手、対抗は東海大か 箱根駅伝・展望を駒大OB神屋氏に聞く

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5連覇を狙う青山学院大はエース・森田歩希(左)を補欠に登録 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 来年1月2、3日に開催される第95回東京箱根間往復大学駅伝競走(以下、箱根駅伝)に出場する全23チームの区間エントリーが29日、発表された。

 5連覇が懸かる青山学院大は、山の5区、6区にはともに実績のある3年・竹石尚人、4年・小野田勇次を順当にエントリー。エースで主将の森田歩希は補欠に回った。

 一方、前回2位の東洋大は、前回ルーキーながら1区区間賞の西山和弥を再び1区に起用し、相澤晃、山本修二の主力2人を補欠で登録。また、11月の全日本大学駅伝で2位の東海大は、“黄金世代”の3年生・鬼塚翔太を1区に起用。エース区間の2区には今季好調の4年・湯澤舜を配置した。

 青山学院大の“1強”と称される今大会はどのようなレースとなるか、そして気になるシード争いの行方は――。駒澤大の元エースで、現在はランニングアドバイザーを務める神屋伸行氏に、箱根駅伝の展望を聞いた。

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気になる青山学院大エース・森田の起用区間

――区間エントリー全体の傾向は?

 オーダーを隠している部分がかなりあると思います。情報戦と言いますか、互いに心理戦を仕掛けている部分はあるかなと思います。

 今回は例年以上に、各大学ともいろいろな情報を(事前に)出しています。フェイクとまでは言いませんが、お互いだまし合うように情報を多く出した上で、今回のオーダーが発表された。そこからいろいろな情報が読み取れはするのですが、肝心なところは分からないといった駆け引きがすごく伝わってくる。それが、今回のオーダーの印象ですね。

――駆け引きというのは、今大会では各チームが心理戦の部分をより重要視しているということでしょうか?

 そうですね。青山学院大だけを考えても、王者として盤石と言われる中で、2区に梶谷(瑠哉)選手を起用してきました。みんなが「2区は森田選手」だという空気の中で梶谷選手を投入してきました。だとしたら、森田選手はどこを走るのだろうかと。3区かなとは思いつつも、これで8区に来たとしたら、6区小野田選手、7区林(奎介)選手、8区森田選手となって、この3区間はとんでもないなという裏読みができなくもありません。

 これは原(晋)監督らしいというか、エース区間なので2区は当然森田選手とみんなが思っているところで、戦略的に駒をどう置くか。チームの適材適所として考えた時に、確かに森田選手を3区に持ってくると、1区の橋詰(大慧)選手、2区の梶谷選手をすごく生かせるような気がするんです。「そういう手があったか!」という感じがあります。

――「生かせる」というのはどういうことでしょうか?

 極端なことを言えば、(3区へのたすき渡しに)最上位で来なくても済むということになります。2区に森田選手を使うならトップ、ないしは3番目くらいまでに来ないといけない。東海大は今回、2区に湯澤選手、3区に西川(雄一朗)選手をエントリーしました。1、2、3区と仕掛けて西川選手で抜け出したいと思っている意図を、3区に森田選手を置くことでくじく感じになるのではないかと思います。

 駒澤大で言えば、1区は片西(景)選手が濃厚かなと思うのですが、1区片西選手、2区に山下(一貴)選手と並べて4区に加藤(淳)選手を置いているとなると、3区は誰になるか。現在登録されている中村大聖選手は多分、外さないと思うのですが、一番隙(すき)になっているところに青山学院大が森田選手をぶつけてくると、駒澤大としても「うわ!」という感じはあると思います。

 そういった部分で、青山学院大は自分たちらしいオーダーを組んだと思います。そして、森田選手が2区という常識的なセオリー通りではなくて、自分のチームがやりやすいように組んだ結果、森田選手が3区に来るとしたら、他のチームからすれば「情報戦でまた一歩先手を打たれた」というような気持ちになるのではないかなと思いますね。

東海大は青山学院大を意識 東洋大は不安要素も

東洋大は1区西山和弥と3区の吉川洋次の調子が鍵となりそうだ 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】

――他の有力校も見ていきたいのですが、東海大はいかがですか?

 今季調子がよくて充実している湯澤選手を2区に置いてきたのはセオリー通りかなと思います。阪口(竜平)選手は7区に登録されましたが、復調してきたとはいえ2区に投入するにはまだ盤石ではないのかなといったところもあります。もしくは、(青山学院大の)林選手がいる勝負どころの7区に阪口選手をぶつけてきたのかもしれません。東海大は6区に(前回区間2位の)中島(怜利)選手がいるので、6、7区は勝負できる可能性があるんです。ですから、青山学院大の出方を読みながらオーダーを組んできたのかなと思います。後は、4区の本間(敬大)選手はそのままいってもいいのですが、ここに補欠に回った館澤(享次)選手か關(颯人)選手を入れるかどうかでしょうか。

 東海大は青山学院大と同じく、戦力としては相当なものを持っています。アンカーに郡司(陽大)選手を回していますし、「最後まで絶対に戦っているよう」にという意思を強く感じます。青山学院大を見据えて、横綱相撲に対してがっぶり四つで組むという、本当に対抗馬という形でガッツリいくようなオーダーではないでしょうか。

――東洋大はどうですか?

(今季不調で)心配されている西山選手と吉川(洋次)選手の状態が鍵になると思います。ただ、彼らが盤石だとしたら、補欠登録している山本選手を4区に置いてくるかどうかですかね。吉川選手の状態が悪くて3区に山本選手という可能性もなくはないので、少し気になります。

 また、6区の今西(駿介)選手が(本人のコメント通り)“人間じゃなくなる”くらいの走りができるか。7区の小笹(椋)選手が青山学院大の林選手に対応できるかどうか。8区の田上(建)選手のところにルーキーの鈴木(宗孝)選手を当ててくるか、それとも山本選手が来るのかがポイントでしょうか。もし西山選手、吉川選手が復調していれば、鈴木選手という強い選手が1枚加わったことになるので前回大会より面白い戦いができるのですが、若干心配な面があります。

――エントリーした主力選手の状態次第ですね。

 西山選手については12月の記録会で28分台をマークしているのである程度めどは立ったのかなと思うのですが、3区の吉川選手は、前回大会(同区区間賞)の山本選手並の期待を込めてここに置かれているのかどうか。できれば4区に山本選手が入って、往路優勝した前回以上に1〜5区まで流れていくのを見せるオーダーだと思いたいですね。

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