sportsnavi

“寝業師”の豊川、実力を証明した植田
ベルギーで地位を確立した大津高OBコンビ

植田と豊川、面白いマッチアップが期待されたが……

セルクル・ブルージュ戦に出場したオイペンの豊川(左)。チームの中心として躍動している
セルクル・ブルージュ戦に出場したオイペンの豊川(左)。チームの中心として躍動している【Getty Images】

 12月26日は、ベルギーのオランダ語圏内で“トゥエーデ・ケルストダフ”と呼ばれる日だ。英語にするとセカンド・クリスマス。“2度目のクリスマス”という意味だ。もともとは、クリスマスの日に働いた人に休暇を与え、いたわる日だったという。26日と27日の試合で、ベルギーリーグはしばし、ウインターブレークに入る。


 セルクル・ブルージュ対オイペンは26日に開催された。もともと、観客動員の少ないセルクル・ブルージュであるが、トゥエーデ・ケルストダフのせいか、観衆も記者も、いつもより少ない気がした。ともあれ、実力の拮抗(きっこう)した中位チーム同士の対決だ。一つのミス、ちょっとした気の緩みが命取りになるゲームだった。


 ピッチの上では、植田直通(セルクル・ブルージュ)と、豊川雄太(オイペン)がお互いを意識し合ってプレーしていた。オイペンのワントップ、豊川は、ボールが自分より遠い位置にある時は、4バックの右センターバック(CB)を務める植田の前に立った。


「おっ、これは面白いマッチアップが見られるぞ!」。そう期待した私の裏をかき、ボールを引き出す動作に移ると、豊川は左CBイサック・コネの方へ流れてしまう。とりわけ試合の序盤、豊川のプレーエリアは、中央よりやや右側だった。


「俺、植田じゃなくて逆(のCB)にいってました。5番(コネ)は本職のセンターバックですか? 違うでしょ」(試合後の豊川)


 セルクル・ブルージュにはベンジャミン・ランボー、ジェレミー・タラベルという2人のベテランCBがいるが、今はそろって負傷離脱しており、MFコネが植田とCBコンビを組んでいる。そこを、豊川は狙っていたのだ。

豊川が追及する“日本にないワントップ像”

植田は今回の対戦を通して「豊川は常に成長している」と感じたという(写真は第20節AAゲント戦のもの)
植田は今回の対戦を通して「豊川は常に成長している」と感じたという(写真は第20節AAゲント戦のもの)【写真は共同】

 この日、豊川が放ったシュートは、空振りも含めて3本だったが、いずれも植田の守備範囲外である、右からのものだった。豊川は中央から左に流れて、クロスを待つシーンもあった。だが、自分の守るゾーンに入ってきた豊川に対し、「お前にはゴールを許さん」と言わんばかりに、植田は豊川の前にポジションをとって、堅実にクリアしたのだ。

 

 試合は、1−0でオイペンが勝ったが、2人の一対一にフォーカスすれば、植田が高さを生かして豊川を自由にさせず、植田に軍配が上がったかに思えた。しかし、植田は、豊川の工夫に満ちた動きと、オイペンの中心選手として活躍する姿に、すっかり感心していた。


「豊川は本当に嫌な相手です。一瞬でもスキがあったら、そこを狙ってくるようなプレースタイルだから、常に豊川のいるところを確認しながら見ていました。豊川には決められませんでしたが、負けたというのが本当に悔しいですね。


(プロになってからは)一緒にやったのは鹿島(アントラーズ)のときだけ。そこから(ファジアーノ)岡山にいって、オイペンに行って、かなり成長したなと、僕も思います。それが結果に出ていて、今はオイペンのエースとして出ている。やっぱり、試合を一緒にやってみても、すごく怖い選手になったという思いがします。


 今日も競り合ったりしましたが、前の試合は簡単に勝ったけど、豊川は映像を見たりして研究しているんでしょうね。今日は、僕が嫌がるような競り方をしてきました。豊川は常に成長しているなと感じました」(植田)


 171センチのエースストライカー、豊川は、思わず「寝業師!」と叫びたくなるほど、嫌らしい動きをしてくる。相手との空中戦での競り合いでは、マークするDFをブロックしておきながら、ボールの落ち際に力を抜いて、わざとヘディングの競り合いに負けておいて、セカンドボールのこぼれる先を読んで走り込んでいる。


「海外でワントップをやれる日本人はあまりいないと思うので、やりがいもあるし、すごく楽しい。“日本にないワントップ像”――それを俺は追求している。(ルイス・)スアレスとか(ガブリエル・)ジェズスとか、あんまり身長はないけれど、ワントップを張ってあれだけ点を取っているから、俺はそこを目指していますね。ゴールに向かって駆け引きする。まだまだですが、俺はそこが理想です」(豊川)

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント