植田直通が楽しむ“バチバチ”とした守備 持ち味の「鹿島のやり方」でチームに貢献

中田徹

「本当に負けられない試合」に勝利

7月に鹿島アントラーズからセルクル・ブルージュへ移籍した植田直通。直近は4試合連続フル出場とチームに貢献している 【写真は共同】

 植田直通が踊っていた。チームメート、ゴール裏のサポーターとともに、腕をシェイクし、ピョンピョン飛び跳ねながら踊っていた。勝利の味は格別だ。

 11月4日、植田が所属するセルクル・ブルージュはホーム、ヤン・ブライデル・スタディオンで、ロイヤル・エクセル・ムスクロンに2−1の逆転勝利を収めた。センターバック(CB)として先発した植田は、試合途中から右サイドバック(SB)もこなして勝利に貢献。第11節のアンデルレヒト戦で先発の座に返り付いてから、4試合連続フル出場を果たした。

 前節を終えた時点でセルクル・ブルージュは勝ち点13の12位。対戦相手のムスクロンは勝ち点9の14位だった。もし、セルクル・ブルージュが敗れてしまうと、残留争いに巻き込まれる可能性もあった

「だから、『今日は本当に負けられない試合だ』とみんな、本当に気合いが入ってました。前回も、(KAS)オイペンにロスタイムで劇的にやられて負けてしまった。結果として勝つことができて本当に良かったです」(試合後の植田)

植田は役割を全うし勝利に貢献

混戦模様のベルギーリーグ。植田の所属するセルクル・ブルージュは上位進出も見えてきた 【写真は共同】

 CBとして対峙(たいじ)したのは194センチの長身ストライカー、フランツディ・ピーロだった。立ち上がり、くさびのパスがピーロに入る寸前、植田はマークを外して縦に走り込んだMFベンジャミン・ファン・ドゥルメンへのパスコースを切り、ピーロのフリックパスをいとも簡単にカットしてしまった。一度、インターセプトを試みた際に、入れ替われてしまった場面こそあったものの、植田はほぼピーロを前に向かせず抑えきった。

 セルクル・ブルージュは前半半ばから数的優位に立っていたが、PKを外したり、相手チームにオウンゴールを献上したりし、0−1のビハインドを負ったまま、試合を続けていた。この苦境に、ローラン・グヨ監督は右SBベンジャミン・ランボをベンチに下げ、ストライカーを一枚増やした。そしてMFイザク・コネがCBに入り、植田が右SBにスライドした。

 植田は「それはびっくりしました」と言って笑った。今度の植田の相手は後半開始から投入されたサイドアタッカー、ファブリセ・オリンガだった。植田は一度、中央にポジションを絞った際にボールの処理ミスがあったのを除けば、無難に右SBをこなしきり、オリンガとのスピード勝負にも競り勝った。

 1−1で迎えた88分には、左サイドからのクロスに対し、ファーサイドにいた植田がヒールキックで触ってCKを得た。そのCKからセルクル・ブルージュの逆転弾が生まれた。

「誰も触らなければ、僕が得点を決めることができると思いましたが、僕がコーナーを奪えたので、まあ、良しと」

 この勝利にもセルクル・ブルージュの順位は12位のまま。だが、順位を一つ下げて15位になったムスクロン、そして最下位ズルテ・ワレヘムとの差を勝ち点7に広げることに成功した。

 しかも、今度は「下」ではなく、「上」を見ることができる。セルクル・ブルージュは10位オイペン、11位コルトライクと勝ち点16で並んでいる。その上も混戦で、プレーオフ1圏内にいるシント・トロイデンVV(STVV)との差は勝ち点5しかない。

「上が混戦ですので、連勝でもすれば上位にいけます。そんなに簡単な試合はありません。自分たちが圧倒する試合はそんなにないと思うので、隙を見せるのではなく、隙を突いていければなと思います」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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