涙の慶応ラグビー、悪夢のラストプレー 「もっとこのチームで続けたかった」
勝利を目の前にして痛恨のスクラム
勝負を分けたスクラム。慶応が反則を取られた 【斉藤健仁】
残り1分半、早稲田はラインアウトでノットストレートの反則を犯して、慶応ボールのスクラムとなる。組み直しの後、残り30秒、このままボールを出して、少しFWでキープしてタッチに蹴り出せば勝利となるはずだった。しかし、早稲田のプレッシャーの前にPRが膝をつくペナルティ。その後、ラインアウトからの相手の攻撃を23次まで耐えたが、24次目で相手WTB佐々木尚(4年)にトライを許し、19対20で逆転負けを喫した。
その瞬間、ピッチにうつぶして起き上がれない選手もいた。ノーサイド後、古田主将をはじめとして多くの選手の目には涙があった。残り30秒、勝利を手にしたと思った後、最後のワンプレーで絶望に落とされた。LO辻、FB丹治らはトップリーグでラグビーを続けるが、4年生の多くはトップレベルのラグビーから引退。4年間、いや7年間戦ってきた選手たちと最後のプレーとなった。
古田主将「地道に裏の仕事をやってくれる人が…」
試合終了後にしばらく立ち上がれなかった慶応CTB栗原由太 【斉藤健仁】
ただ、指揮官も勝敗の鍵を握ったのはスクラムと感じていた。「(前半30分過ぎの)勝負どころのゴール前のスクラムと、最後のところもそうですが、一番のキーとなるところで相手側に判定が下ったのは厳しかった」と唇をかみしめた。
古田主将も「明確にスクラムについて自信を持っていました。4年間やってきたディフェンスができた」と胸を張った。来年、再来年も大学生だが、ラグビー部からは引退を決めている医学部の古田はこう続けた。
「チームの中には地道に裏の仕事をやってくれる人がいっぱいいて、そういう人が報われるのは結果だけなので、それが出なかったことが悔しい。チームの中だけでなく、メディアの方も、慶応ラグビー部と僕を支えてくださったので、そういう人のために勝ちたかった。4年間は本当に充実したラグビーシーズンを送ることができました。でも強豪校に対しての勝ちは少なかったので悔しい」
副将としてFWを引っ張ったLO辻は「自分としてはベストを尽くしたつもり。100%で毎日取り組んできて、後悔ないようにやってきたつもりですが、結果がすべて。運を運び切れなかったのが、僕たちの実力だと思うので、本当に悔しい。でも本当に古田と良いコーチ陣と、仲間、良い後輩に巡り合えたので、本当に感謝したい」と目を赤くしながら毅然として答えた。
「(高校時代に続き)また、こういう負け方か、ついていないですね」とため息をついたWTB宮本瑛は、春から銀行マンになる。「後輩たちが悔しさを晴らしてくれると思うので、僕から伝えることがあれば伝えていきたい」。FB丹治は「本当にもっとこのチームで続けたかった。その気持ちしかない。結果にこだわってやってきて、やっと自分らしさが出てきて、個人でできなかったことがないかと振り返るとない。でもチームとして負けてしまった。『良いチームだった』と言いたかったですね。悔しい……」と秩父宮ラグビー場を後にした。
個性豊かな選手がそろったチームの戦いに幕
スピード、サイズとともに独創的なプレーも光ったFB丹治 【斉藤健仁】
いずれにせよ、今年度の慶応はもっとプレーが見たかったと思わせる、個性豊かなタレントがそろうもまとまりのある素晴らしいチームだった。