クラブW杯3連覇に挑むレアル・マドリー リーベルプレート敗退も不安は拭えず

クラブW杯へのモチベーション

ラージョ・バジェカーノに辛勝してクラブW杯に乗り込むマドリー。準決勝の相手は鹿島アントラーズだ 【写真:ロイター/アフロ】

 5年間で4度UEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制してきた2014年以降、レアル・マドリーは誰の目にも明らかな大本命としてクラブワールドカップ(クラブW杯)に臨んできた。

 多くのスター選手を擁し、恐るべきポテンシャルを誇るレアル・マドリーに対し、クラブW杯で対戦するチームのほとんどはCLで対戦してきたライバルよりも明らかにレベルが劣っていた。

 だからこそレアル・マドリーの選手たちは、自分たちをモチベートするために「CLで優勝しなければクラブW杯には出場できない。だからこのタイトルを手にすることは簡単ではない」といった発言を繰り返してきた。ラージョ・バジェカーノに1−0で辛勝した先週末の試合後も、DFラファエル・ヴァランが同様のことを言っていた。

 レアル・マドリーがクラブ世界一を決めるコンペティションをリスペクトするようになったのは2000年大会以降のことだ。ロス・ガラクティコス(銀河系軍団)と呼ばれた当時のチームは、日本で行われた同年12月のトヨタカップで難攻不落のボカ・ジュニアーズに1−2で敗れている。早い段階で日本入りして万全の態勢を整えた南米王者に対し、ロス・ブランコスは自分たちの実力を過信し、試合の数日前に現地入りした代償を払うことになった。

 その2年後。パラグアイのオリンピアを2−0で破った02年のトヨタカップの前には、キャプテンのフェルナンド・イエロが「ボカ戦の過ちは二度と繰り返さない」と日本へ旅立つ前に発言している。その後もクラブW杯がCLと同レベルの重要性を持ったことはない。だがレアル・マドリーが十分な調整期間を確保できるよう、ラリーガの試合が延期されたのはこの時が初めてのことだ。

チーム状態は過去数年と比較にならず

 クラブW杯となってからは出場した3大会全てでタイトルを獲得してきた。だが多くの成功を手にしてきた過去数年とは違い、今回は多くの不安要素を抱えたまま大会を迎えることになる。

 5月にはジネディーヌ・ジダンが電撃退任。得点源のFWクリスティアーノ・ロナウドもユベントスに移籍したことで、レアル・マドリーを取り巻く空気は一変した。スペイン代表がワールドカップの初戦を迎える3日前に代表監督だったジュレン・ロペテギとの契約を公表するという馬鹿げた行為も、クラブに対する風あたりを強くした。「はじめ方が悪ければ、ろくな終わり方はできない」とはよく言ったものだ。

 サンティアゴ・ソラーリがロペテギの後任に就いた後も、レアル・マドリーは多くの不安要素を抱えている。CL3連覇の立役者であるGKケイロル・ナバスが同じGKのティボ・クルトワの加入によってベンチに追いやられたように、不条理な選手補強が繰り返される中で他クラブへの移籍を望む選手は増えつつある。MFイスコ・アラルコンやFWギャレス・ベイル、FWカリム・ベンゼマらは厳しい批判にさらされ、ホームのファンから度々ブーイングを受けるようになった。

 ロス・ブランコスはかつての強さを失い、無敵を誇った勝者のチームという一時のイメージも影をひそめるようになった。0−3で惨敗したエイバル戦やCSKAモスクワ戦、クルトワの好セーブに救われる形で辛勝したウエスカ戦、ラージョ戦などの苦戦ぶりは、現在のチーム状態を浮き彫りにしていた。

 このような状況下、レアル・マドリーは12月19日(現地時間)にアブダビで行われるクラブW杯の準決勝で鹿島アントラーズと対戦する。鹿島は2年前の決勝で大苦戦を強いられ、延長戦の末に4−2で競り勝った相手だ。

予想外のリーベル敗退は追い風だが

アル・アインにまさかの敗戦を喫し、肩を落として引き上げるリーベルプレートの選手たち 【写真:アフロスポーツ】

 もう1つの準決勝では、南米王者のリーベルプレートがホスト国UAEのアル・アインにPK戦の末に敗れる波乱が起きた。

 リーベルはサンティアゴ・ベルナベウで開催された異例のファイナルで宿敵ボカを破り、史上4度目のコパ・リベルタドーレス制覇を果たした。初の世界制覇を目指す彼らにとって今大会は絶好の機会であり、マドリーでは1日だけ祝杯を挙げた後、すぐにアル・アインへ飛んで12月18日の準決勝に向けた調整に専念していた。

 しかもマルセロ・ガジャルドが監督に就任した14年以降、リーベルはコパ・リベルタドーレスを2度、コパ・スダメリカーナを1度、CONMEBOLレコパを2度、コパ・アルヘンティーナを2度、スルガ銀行チャンピオンシップを1度制しており、3年前のクラブW杯決勝を経験している選手も健在だった。

 また以前はコパ・リベルタドーレスの決勝が6月に行われていたことで、南米代表のチームにはクラブW杯を迎えるまでに大半の主力選手を引き抜かれてしまうという問題点があった。だが昨年からは11月末に全日程を終える形に変更されたため、主力選手と良いチーム状態を維持したままクラブW杯に臨めるようになった。

 それだけにリーベルの敗戦は驚きだった。これで南米勢は2012年大会の決勝でチェルシーを破ったコリンチャンスの優勝を最後に、6年連続でタイトルから遠ざかっている。

 今大会の後にはMFゴンサロ・マルティネスがアメリカのアタランタ・ユナイテッド、MFエセキエル・パラシオスがレアル・マドリー、MFフアン・フェルナンド・キンテロが中国リーグに移籍する予定だ。彼らにとっては3位決定戦がリーベルでのラストマッチになるだろう。

 リーベルの敗退はレアル・マドリーにとって朗報のはずだが、現在のチーム状況を見る限り3連覇が安泰だとは言い難い。ここ数試合の低調なパフォーマンスを繰り返すようであれば、準決勝で足をすくわれる可能性も十分にあり得そうだ。
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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