CL12戦負けなしのアヤックス 「オランダのバイエルン」に近づけるか

中田徹

バイエルンとのしびれる一戦

アヤックスはバイエルンと引き分け、CLグループリーグを2位通過。欧州屈指の強豪と堂々と渡り合った 【Getty Images】

 試合が終わってから24時間近く経つというのに、私は今も3−3で終わったアヤックス対バイエルン・ミュンヘンの余韻に浸っている。

 数々の好プレーに脳みそがしびれた。バトルの中にも、知恵の比べ合いの要素も含んだ一対一に興奮した。鮮やかなパスワークに酔った。

 アヤックスの失点シーンは、いずれもミスが絡む自滅に近いものだった。そのことにショックを覚えた。一方で、ミスを引きずることなく、前向きにプレーし続ける彼らに感心した。

 観衆の大声援とブーイングに鼓膜が震えた。5万3000人の大観衆が飛び跳ねて、観客席が揺れる恐怖を覚えた――。

 そんな余韻を今も私は楽しんでいるのである。

 この試合にアヤックスは、チャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ首位通過を懸けて挑んでいた。そのための条件はただ一つ、バイエルンに勝つことだった。そんな大事な一戦でアヤックスはポジショニングのミスから、13分に早くもレバンドフスキにゴールを割られてしまった。代表、クラブに共通する、近年のオランダサッカーの弱点(=立ち上がりが悪い)が、ここでも出てしまった。

 しかし、復活著しいオランダ代表とアヤックスには、ここ半年で身に付けた共通の武器がある。それが、まるでドイツのような勝者のメンタリティーだ。その権化であるバイエルン相手に、アヤックスは幾度もピンチに遭いながらも立ち上がり、メンタル勝負でもフィジカル勝負でも負けなかった。

自滅から勝ち越し許すも土壇場で追いつく

 とりわけ、1−1に追い付いた61分以降の攻防は壮絶だった。

 66分、バイエルンのセンターFWレバンドフスキがゴール目の前で完璧なヘッド。これをGKオナナが驚異的な反応でセーブ。67分にはアヤックスのセンターバック(CB)、ウーバーが危険なタックルで退場。10人になったアヤックスは自陣に引いて、カウンター狙いに。75分、今度はバイエルンのミュラーが、タグリアフィコの頭を蹴り、一発レッド。間髪入れずアヤックスはセンターFWドルベリを入れて勝負に出る。

 82分、ドルベリが倒されて得たPKをタディッチが決めて、ようやくアヤックスが2−1とする。スタジアムは大興奮。87分、バイエルンはMFチアゴのドリブルからPKを得て、レバンドフスキのゴールで2−2と追い付く。

 迎えた90分、アヤックスのビルドアップミスを突いたバイエルンが、コマンのゴールで再びリード。アヤックスの自滅だった。しかし90+5分、ドルベリ、フンテラールに加え、CBデ・リフトが前線に張り、ロングボールから強引にアヤックスはゴールを奪いにいく。その策が実り、タグリアフィコが執念のゴールで3−3とする。

 そして90+7分、タイムアップ。バイエルンの1位、アヤックスの2位が決定した。

 もうちょっと試合運びがうまければ、アヤックスが勝っていたはずのゲームだった。だから、アヤックスにとっては、もったいない引き分けだった。その悔しさを心のどこかに抱きながら、ヨハン・クライフ・アレーナを覆ったのは誇りだった。アヤックスの選手たちは勝者のように顔を上げ、胸を張って場内を一周し、ファンからの惜しみないスタンディングオベーションを浴びていた。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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