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“則本の弟”が語る兄への思い
同じ楽天で、育成2位からエースを目指す

 入団から6年連続2ケタ勝利を挙げ、通算75勝を誇る楽天のエース・則本昂大を兄に持つ、弟の佳樹。兄とは対照的に、紆余曲折の野球人生を歩んできた。念願のドラフト指名を受け、兄と同じユニフォームを着るが、背番号は3ケタ。育成選手からの出発である。

兄・昂大は「超えるべき選手」

2年間在籍した山岸ロジスターズではエース格として活躍し、真っ向勝負が持ち味である
2年間在籍した山岸ロジスターズではエース格として活躍し、真っ向勝負が持ち味である【写真:BBM】

 1つ1つの質問に対し、真摯(しんし)に受け答えする際の鋭いまなざし。マウンド上から見下ろされれば、打者は思わず、圧倒されてしまいそうだ。兄・昂大によく似ている。


「兄は目標で、超えるべき選手だと思います。そこを超えられるようにしたい。兄と同じ舞台で、肩を並べて投げられるような選手を目指します。ここからが一番大変ですが、(1日でも早く)支配下をもぎ取るつもりで、1軍で活躍できる選手になれるよう、これから頑張っていきたいです」


 兄が在籍するイーグルスの一員となる。育成ドラフト2位指名で、背番号は136。厳しいプロ生活が始まるが、これまでも逆境からはい上がってきた野球人生を歩んできただけに、覚悟はできている。


「まさか、楽天のユニフォームに袖を通すことになるとは思っていなかったので、すごくうれしい。これから期待に応えられるように努力していきたい」

社業後に白球を追う、常に全力の2年間

 滋賀県の公立校である北大津高では3年夏(2012年)に甲子園出場(背番号10)。滝川二高(兵庫)との1回戦で先発し5失点で敗戦投手となったものの、9回途中まで投げている。当時、兄・昂大は三重中京大の4年生で、その年10月のドラフト会議で楽天から2位指名を受けている。兄は同年6月の大学選手権1回戦(対大体大)で10回を投げて20奪三振(参考記録)の快投(チームは1対2で敗退)。当時はまだ、佳樹が「則本の弟」として取り上げられる機会は少なかったと記憶する。


 北大津高を卒業後は近大へ進学するも、右ヒジ痛により手術を経験している。関西学生リーグでの出場は4年春の関大戦での1試合、1イニングのみの登板。4年間で目立った実績を残せなかったが、野球をあきらめるつもりは毛頭なかった。


 現役投手の道をつなぎ止めたのは16年8月16日に行われた、山岸ロジスターズ(静岡県島田市)のセレクション&会社説明会だった。同チームの運営母体は山岸運送グループ。同社に限らず、物流企業、運送業界は人材不足問題が深刻化している。若い人材を確保する目的として社会人チームを立ち上げた背景があり、同年5月2日に設立された。記念すべき第1期生として入社したのが則本をはじめとした28人のメンバーであったのだ。山岸ロジスターズは翌17年6月19日、日本野球連盟に新規加盟のクラブ登録として承認された。


「2年前に山岸のセレクションを受けたときから、自分の中の想像としては、プロへ行く気持ちをずっと持っていました」


 入社から2年間、則本は社業と野球を両立してきた。日常業務ではトラックなどの大型車を塗装する「オートボディプリンター」を担当。その仕事が終わった後は白球を追う、全力の日々を過ごした。


「ほかの(社会人の)選手に比べて、練習量が少ない環境で2年間やってきたので、それを取り戻すためにも、まずは走って体力をつけることだと思います。兄とも相談して、走り込みを強化したいです」


 山岸ロジスターズは加盟2年目、初めて参戦した都市対抗東海一次予選(静岡)を突破した。則本は静岡硬式野球倶楽部との初戦を、7回4失点で7回コールド勝利(14対4)に貢献している。同二次予選でもホンダ鈴鹿との第1代表決定ゾーン1回戦、永和商事ウイングのとの第3代表決定ゾーン敗者復活1回戦の2試合で救援。チームはここで2敗目を喫して都市対抗出場を逃したものの、会社登録(企業)チームを相手に、貴重な経験を積んだ。

緩急で勝負する投球スタイルが武器

育成選手として背番号136を背負う弟・佳樹の表情からも、兄譲りの強気の性格が、にじみ出てくる
育成選手として背番号136を背負う弟・佳樹の表情からも、兄譲りの強気の性格が、にじみ出てくる【写真:BBM】

 佳樹の2年間の成長を、バックネット裏から見守っていたのが楽天だ。担当の山田潤スカウトは、近大時代から視察してきた。


「ヒジを手術したこともあって、球速がなかなか上がってこなかった中で、イメージチェンジをした。(プロでも)力で押すよりも緩急、ストレートのキレで打たせて取るような投手になってほしい。投球センスの良さもあるし、気持ちの強さは兄に似ている。投げ方もそっくり? そうですね。無意識なのか、似ていますね」


 育成ドラフト2位での獲得へ至った経緯を、こう説明する。


「彼の持っている能力は、もちろん評価しています。変化球のキレ、ストレートの球質の良さ。いずれ戦力になってくれたら、という思いで指名させていただきました。もう1度、ストレートの球威を含めて、しっかりと練習をして技術を上げていって、まずは支配下登録されること。いずれは、優勝の力になれるように頑張ってほしいです」


 投球スタイルも、どうしても兄の姿をイメージしてしまうが、山田スカウトは否定する。「タイプ的には兄とは逆で、パワーというよりも、変化球のキレやストレートの質で勝負するタイプ」と語り「150キロは出なくても、140キロ前後でも打者が空振りするような、ファウルになるような球質。キレのある伸びのある球を目指してほしい」と期待を込めた。


 最速145キロ。佳樹も自らの投球パターンを熟知しており「打たせて取るリズムのいいピッチングをこれからも続けていけるように、まずは課題であるストレートのレベルをもっと上げていきたいと思います」と語る。自信のある変化球はツーシームで、このほかカーブ、スライダー、フォークを巧みに操っていく。


 人として、野球選手として尊敬するのはもちろん兄だが、あこがれるのは、来年からチームメートとなる岸孝之である。


「岸投手のカーブが魅力的で、僕も投げたいと思っています。アドバイスしていただければいいですが、自分からも積極的に盗んでいって、変化球全体の精度も上げていきたいと思います」


 楽天のエースの弟。兄と同じユニフォームを着る以上、比較されるのも宿命だ。


「やっぱりプレッシャーはありますけど、比べられて当然ですし、その重圧が僕のエネルギーになると思っているので、そこをバネにやっていきたいです」


 そう力強く語ると、目の鋭さが増した。背番号14の兄の背中を追う、背番号136が杜の都・仙台でプロ野球選手としてのスタートを切る。

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