東海大のアタアタ「僕には日本しかない」 ラグビーW杯出場への熱い思い

斉藤健仁

U20世界大会でトライ王に

U20世界大会でトライ王に輝くなど、爆発的なスピードが武器 【斉藤健仁】

 大学ラグビーの舞台でもアタはタタフと大学1年から躍動していたが、そんなアタを世界的に有名にしたのは2016年、イングランドで開催された20歳以下の世界大会「U20チャンピオンシップ」だった。

 すでに日本代表キャップを獲得していたアタは、この大会のU20南アフリカ代表戦で、試合には負けたものの「ハットトリック」となる3トライを挙げた。ワールドラグビーのSNSではそのスピードを「新幹線」にたとえられるほどだった。そして、同大会では6トライを挙げてトライ王にも輝いている。

 スピードがありスキルも高く、BKではSH以外のすべてのポジションでプレーできるアタを、日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHCも放っておくことはなかった。大学3年生となった2017年、アタはサンウルブズのスコッドに選出され、一気にスーパーラグビーでもブレイクするのでは……と期待されていた。

サンウルブズに招集されるも負傷でプレーできず

サンウルブズデビューは果たせなかったが、来季以降に選出の可能性がある 【斉藤健仁】

 だが、合宿に参加してすぐの3月、練習中に右肩を負傷してしまい、結局、そのシーズンは試合に出ることは叶わず、スーパーラグビーデビューは残念ながらお預けとなってしまった。また。同年の夏合宿明けに右膝の半月板を痛めてしまい、今年の1月にはメスも入れた。昨年はジョセフHCからコンタクトはあったそうだが、今はなくなり、2018年はサンウルブズのスコッドに呼ばれることはなかった。

 U20世界大会に出場した選手の中にはすでにスーパーラグビーや代表でも主力となっている選手もいる。アタは焦る気持ちを抑えつつ「サンウルブズでチャンスもらえたら、日本代表に呼ばれたかもしれない。(試合に出ることができず)ちょっと悔しかった。憧れの選手はニュージーランド代表FBベン・スミス(ハイランダーズ)です。早くスーパーラグビーの試合に出たいです」と言えば、木村監督も「アタはBKならどこでもできるし、FLやNo.8だってプレーできる。控えに入れておけば……」と、サンウルブズや代表レベルでの活躍にも太鼓判を押す。

「来年のW杯には強く出たいと思っています」

東海大の大学日本一、自身のW杯出場に向けて進んでいく 【斉藤健仁】

 将来の夢は「日本代表としてワールドカップに出場すること」というアタは、来年の日本大会出場もあきらめていない。「来年のワールドカップには強く出たいと思っています。サンウルブズに呼ばれないかもしれないので、チャンスがあったらほかのスーパーラグビーチームでプレーして日本代表に上がりたい!」と、わずかかもしれないが、桜のジャージへのチャンスをうかがっている。

 もちろん、その前に大学ラグビーで高いパフォーマンスを続けることも重要である。キャプテンとして東海大を初の日本一に導くような活躍を見せれば、当然、「(日本代表を)日本全土から選ぶ」というジョセフHCの目に再び留まる可能性もあろう。

 膝のケガの影響もあって「体重が増えすぎている」と監督に指摘されたアタは、5キロほど痩せて現在の体重は112キロ。「もうちょっと減らしてもいいかな」と笑顔を見せたアタは「とりあえず目の前のことを一生懸命頑張って、自分のできること、強みをアピールしたい」と、まずはキャプテンとしてチームの先頭に立ちつつ、リーグ戦一試合一試合に集中している。

 好きな言葉はトンガ語で「ありがとう、感謝」を意味する「Malo」。大学卒業後も日本のトップリーグでプレーすることを決めているアタは「僕には日本しかない。僕が日本でラグビーできるのは、トンガの両親や日本で関わってくれた人たちのおかげ」とチームメイトや周囲への感謝を胸に、大学日本一、そして、その先にあるワールドカップへまい進している。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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