川島永嗣の恩師が語るGKの神髄<第3回> 基本中の基本、「キャッチング」の重要性

GKの神髄、第3回は基本中の基本である「キャッチング」について 【Getty Images】

 サッカーにおいて異質であり、同時に重要なポジションであるゴールキーパー(GK)。大舞台になればなるほど、良い意味でも悪い意味でも、必ず話題にのぼる「守護神」の神髄を、ジャンルイジ・ブッフォンや川島永嗣の恩師であるイタリアの名GKコーチ、エルメス・フルゴーニ氏が全6回の短期集中連載で語る。(取材・構成:片野道郎)

ボールを「弾く」ことに慣れてはいけない

 シュートブロック、すなわちゴールの前に立ち、飛んできたシュートをキャッチする。あるいはゴールマウスの外に弾き出すことは、GKの最も基本的なプレーだ。その前段階としてのポジショニングの重要性については、前回の記事で取り上げた通り。今回は、飛んできたシュートに対してGKはどう対応すべきかについて見ていくことにしよう。

 飛んできたシュートに対してGKは、それをキャッチするか、それともディフレクティングやパンチングで「弾く」か、という選択肢を常に持っている。ここでの基本原則は、可能な限りキャッチする方を選ぶこと。GKがボールをキャッチしてしまえば、プレーは必ずそこで一度途切れる。しかし、弾いた場合にはプレーは続行され(あるいは相手のCKになり)、その後に何が起きるかはまったく分からない。状況がより悪化することもしばしばある。この一点だけ見ても、キャッチングがどれだけ重要かが分かるだろう。

 私は、育成部門においてはキャッチングがきちんとできるようにならない限り、ディフレクティングやパンチングの技術を教えるべきではないと考えているし、実際にそうしてきた。ディフレクティングやパンチングは、飛び出しやダイビングの動作をほぼ必ず伴うため、より高度なコーディネーションが求められることも理由のひとつだが、それ以上に、ボールを「弾く」ことに慣れてしまうと、ボールをキャッチしようとしなくなってしまうことが最大の理由だ。

4種類のキャッチング技術、細かい動作に見えるが……

ひとつひとつは細かい動作だが、ひとつの動作を怠っただけで致命的な失点の原因になり得る 【写真:ロイター/アフロ】

 シュートに対するキャッチングの技術は、飛んでくるボールの高さによって違ってくる。大きく分けると、頭よりも高いボール、頭から胸の高さのボール、腰から下のボール、グラウンダーとそれに準じる低いボールの4種類になる。

 頭より高いシュートは、後ろに逸らしたら即失点につながってしまうため、キャッチするよりは弾く方が安全だ。頭の高さから胸の高さまでのシュートは、指先を上に向けて体の正面で受け止めるのが原則。できるだけ腕を前に伸ばしてボールに触れ、その直後に肘を曲げてインパクトを吸収する。避けるべきなのは、胸の高さのシュートを、指先を下に向けて抱え込むようにキャッチすること。タイミングを誤ると、簡単に胸で弾んでファンブルしてしまうことになるからだ。

 腰から下のボールは、手のひらを下に向けて、抱え込むようにキャッチする。これはグラウンダーのボールも同じだ。この場合、必ず上体を前に曲げ、ボールを抱え込む動作を伴うことになる。この動作は、一見すると自然な動きのように見えるが、実際には訓練して身に付けなければならないものだ。

 基本は、片膝をついて上体を前傾させ、両手を伸ばして、すくい上げるようにキャッチし、そのまま抱え込むこと。片膝をつく動作は、両膝を平行にしてボールに正対するのではなく、ほんの少し腰をひねって体をやや開き、膝も斜めにつくことが大事だ。これによって、より広い幅をカバーすることができるし、もしファンブルしても、ボールは正面ではなく横に逃げることになる。ついた膝と逆足の踵(かかと)との間をボールより狭くしておけば、股の間を抜かれることもない。

 ここで触れているような細かい動作は、ややもすると些末(さまつ)なこと、枝葉末節(しようまっせつ)に属する事柄だと考えられがちだが、決してそうではない。ひとつの動作をきちんと行わないだけで、それが致命的な失点の原因になり得るというのが、GKというポジションの怖さだからだ。

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著者プロフィール

1948年2月3日生まれ。パルマで当時13歳だったジャンルイジ・ブッフォンを見出し、一流に育てた名コーチ。その後ヴェローナ、レッジーナ、チェゼーナ、カリアリ、パルマのGKコーチを歴任。日本代表GK川島永嗣とは01年のイタリア留学を受け容れて以来恩師とも呼ぶべき関係にあり、14年にはFC東京のGKテクニカルアドバイザーも務めるなど日本とも縁が深い。

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