韓国馬を一蹴! 今年も日本馬は強かった 好騎乗の藤井勘一郎、夢のJRA騎手受験へ
接戦制したモーニン、石坂調教師も鞍上を賞賛
モーニンを勝利に導いた藤井の好騎乗、石坂調教師も手放しで絶賛した 【写真:有田徹】
そのコリアSはコリアCの1つ前の第8レースとして行われ、1着賞金3990万円。昨年は武豊騎乗のグレイスフルリープが制したが、第1回の日本馬は敗れており、死角があるとすれば、こちらのレースと思われていた。
オッズも1番人気ながら2.6倍と韓国の競馬ファンも半信半疑の様子。案の定、海外初挑戦のモーニンは初の1200メートル戦と韓国特有のテンの速さに戸惑い、ついていけない。大外発進の香港馬ファイトヒーローにかぶせられ、にっちもさっちもいかない状態となった。
だれがどう見ても大ピンチ。半ば、リョン騎手の頭脳プレーに感心しかけていたが、世界を股に掛けて騎乗してきた藤井も負けてはいなかった。懸命に手綱をしごき、パートナーを励ます。直線ようやくエンジンが掛かったモーニンはGI馬の底力を発揮し、香港馬の追撃をクビ差でしのいだ。時計は1分11秒5。藤井は笑顔で胸をなで下ろした。
「道中は考えていた中で一番嫌な展開。直線向いて“これなら”と思ったが、最後まで気は抜けなかった。最後はモーニンが頑張ってくれた」
主催者発表のモーニンの通過順は11−9−4で、2着馬は12−10−5と終始、張り付かれる形。かつてジェンティルドンナ、ヴァーミリアンなどで国内外のGI級を23勝している石坂調教師も「外から来られるとダメなタイプ。揉まれ込んだときは正直、“アカン”と思ったほど」と観念しかけたが「残り200メートルでなんとかなるかと。藤井君がうまくカバーしてくれました」と鞍上を賞賛した。
世界各国で騎乗する藤井「JRAで乗るのは夢ですから」
オーストラリア、シンガポール、韓国など世界各国で勝利を挙げている藤井が夢のJRA騎手合格へ6度目のチャレンジをする 【写真:有田徹】
オーストラリアで279勝、韓国でも151勝を挙げトップジョッキーとして知られており、第1回コリアCをクリソライトで制覇。今回のコリアSで韓国GIをダブル制覇の快挙となった。その他にも15年トゥクソムCを日本馬エスメラルディーナで勝ち、地元馬でコリアダービー、グランプリといった主要レースを軒並みものにしている。今回、モーニンの鞍上に指名されたのも経験と実績を買われてのものだ。
「いい馬に乗るためにジョッキーをしている。選んでもらった以上は常に結果を出したい」
北海道に妻と1男、1女の家族を残す藤井は今後、南関で騎乗し、JRAの騎手試験に6度目のチャレンジをする。
「モレイラも受かってほしい。何しろ年間300勝ペースの男ですからね。もちろん自分も、です。JRAで乗るのは夢ですから」
どこかメジャーリーガーのイチローを思わせる風貌。今回、苦境を突破したモーニンでの韓国スプリント制覇は感動的でもあったし、彼のキャリアにとっても節目になったはずだ。この先、カンイチローの前途には、どんなドラマが待っているのだろうか。