この田辺の積極姿勢がジェネラーレウーノを再び3歳クラシック戦線の有力候補に押し上げたのは事実だが、厩舎陣営の“秘策”も見逃せない。矢野調教師が今回施した馬具について、こう明かした。

「レース直前まで、いつも使っているパシュファイヤー（馬の覆面の目穴部分を網目状のネットで覆ったもの。ホライゾネットとも言う）に、さらに網をかぶせて視界を狭めたんです。それがドンピシャでしたね」

　これまで以上に視界を覆われたことで、結果、走ることに集中したジェネラーレウーノ。また、タニノフランケルがよどみないペースで引っ張ってくれたことで「展開がすごく向いてくれた」とトレーナーは分析する。と言って、すべては展開のおかげで恵まれた、というわけではもちろんない。

「夏の放牧から帰厩してきたとき、馬体が大きくなって成長を感じましたし、パワーもついているなと思いました。今回のレースは強い内容だったと思います」

　そう胸を張った矢野調教師。クラシック最後の一冠、菊花賞に向けては「最終的にはオーナーと相談してから」と、この場での明言は避けたが、もし出走となった際には「距離は長くてもいい。それよりも展開ですね。どういうレースができるかだと思います」と、伝統の淀3000メートル攻略の鍵を挙げた。

　4勝のうち中山で重賞2勝を含む3勝と、数字だけ見れば“中山専用機”とも見なされかねないジェネラーレウーノだが、この先行力と持続性のある脚はあのキタサンブラックを思い出させる。振り返ればキタサンブラックも皐月賞3着→ダービー惨敗→セントライト記念快勝からの菊花賞制覇だった。ぜひジェネラーレウーノには第2のキタサンブラックとして、淀の地を踏んでほしいものだ。

　一方、2着に敗れたレイエンダ。重賞どころかオープン初挑戦で2着というのは立派なのだが、この1戦で現3歳世代の勢力図を一気に塗り替えるところまでは行かなかった。

「脚は使っているんだけどね、勝った馬が強かったよ」と、淡々と振り返った藤沢和調教師。「スタートは上手に出てくれたけど、もう少しいい位置に行ければね」とも語っており、騎乗したルメールも「大外枠は不利でしたし、経験が少ないことで差が出ました」。加えて、タニノフランケルが作った流れは、前半は平均ペースの1000m60秒9なのに、直後から11秒5−11秒2−11秒6とラップが一気に上がった変則ペース。ルメールの手は3コーナー過ぎから動き出し、明らかにレースの流れについていけていなかった。それでいて2着に差し込んだのは、高い素質と能力の証しだろう。

　となると、気になるのは次戦。菊花賞への優先出走権は獲得したが、戦前から菊花賞参戦は明言しておらず、昨年は兄レイデオロもトライアル神戸新聞杯から菊をパスしてジャパンカップに向かった。と言って、レイエンダ自身は重賞2着分の賞金は加算できたものの、天皇賞・秋、ジャパンカップとなると出走枠に確実に入るには額が足りない。藤沢和調教師はレース後も今後の路線については明らかにしないまま「考えます」と述べるにとどまっており、レイエンダの動向は菊花賞を占う上でも大きな選択となりそうだ。

（取材・文：森永淳洋／スポーツナビ）