ウィルチェアーラグビー日本が初の世界一 快挙支えた外国人HCのマネジメント力

瀬長あすか

エース池崎、涙の世界選手権初V

世界選手権で優勝し、喜ぶ池透暢(左)と池崎大輔。日本代表が、2020パラリンピックの金メダル候補に名乗りを上げた 【写真は共同】

 オーストラリア・シドニーで開催されたウィルチェアーラグビー世界選手権決勝は10日、東京パラリンピック金メダルを目標に掲げる日本がリオパラリンピック金メダルのオーストラリアを1点差で退け、初の世界チャンピオンに輝いた。

 大会MVPを獲得した日本のエース池崎大輔は、うっすらと涙を浮かべながらこう話した。

「2020年に日本がチャンピオンになるために、『追われる立場』から新たなチームを作る経験が必要だった。これから挫折もあるかもしれない。でも、きょうから2020年に向けてスタートできることがうれしい。挫折して立ち上がりもっともっと強いチームを作っていきたい」

 リオから東京の折り返し地点。東京パラリンピックの前哨戦ともいえる今大会で理想通りの金メダル獲得。最高の形で東京パラリンピックの金メダル候補に名乗りを上げた。

世界2位米国を倒して決勝へ

ボールを運ぶ池。予選で敗れたオーストラリアと決勝で再戦することになり、チームの結束も高まっていた 【共同】

 パラリンピックに次ぐビッグイベントで、4年に一度行われる世界選手権。日本はまず、12チームが2つに分かれて戦う予選リーグで4勝1敗の成績を残し、準決勝に進出した。

 もうひとつの予選グループを勝ち抜いてきたのは世界ランキング2位の宿敵米国だった。スピードのある池崎と正確なパスが持ち味の池透暢(ゆきのぶ)を中心としたラインナップで戦う日本は、第1ピリオドで相手エースからボールの保持権を奪って勢いに乗ると、第2ピリオドでは世界選手権5度目の出場となるベテラン島川慎一が落ち着いたボール運びで加点。穴のないディフェンスで米国を追い詰め、5点差をつけて前半を終えると、その後も、リードをキープし51−46で勝利。この時点で10年バンクーバー大会の銅メダルを上回る、史上最高の2位以上が確定した。

 だが、世界一を目指す彼らは決して満足しなかった。

 翌日の決勝で金メダルを争うことになったのは、世界最強プレーヤーといわれるライリー・バット擁するオーストラリアた。オーストラリアは、日本が予選で52−65で敗北している相手。だが、米国から大きな一勝を挙げた、日本チームの結束力は高まっていた。

 ケビン・オアーヘッドコーチ(以下、HC)は振り返る。
「決勝のオーストラリア戦は予選のときとは違い、いい準備ができていた。決勝を迎える前にもいいミーティングができ、選手たちにはタイムアウトを取りながら、自分たちのゲームプランを遂行しなさいと話した。それがうまくいって波に乗れたのだと思う」

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著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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