スターの自撮りに守備中インタビューも MLBオールスターは新時代へ

杉浦大介

試合中にセルフィーからSNS

試合中にスマートフォンで写真を撮るアブレイユ、セベリーノ、マチャドら 【Getty Images】

 これもまたスマートフォン全盛の現代らしい光景と言えたのだろうか。

 試合のインターバル間に選手たちがフィールド上でセルフィーを取っている姿がそこら中に見受けられた。2回開始前には、マウンド付近でルイス・セベリーノ(ヤンキース)、マニー・マチャド(オリオールズ)、ホセ・ラミレス(インディアンス)、アルテューベ、ホセ・アブレイユ(ホワイトソックス)というア・リーグのラテン系選手たちが記念撮影。セベリーノがソーシャルメディアに投稿したその写真は、すぐにMLBの公式ツイッターによってリツイートされた。2回裏にマット・ケンプ(ドジャース)が二塁打を打った際にも、セカンドベース上でマチャドがスマートフォンを取り出してさっそく記念撮影している姿がTVカメラに捉えられている。

 米国内で試合を中継した『FOX』は、守備についているケンプ、フランシスコ・リンドア(インディアンス)、チャーリー・ブラックモン(ロッキーズ)らとマイクをつなぎ、プレー中に延々とライブ・インタビューを続ける場面もあった。

 楽しむのが目的のオールスターとはいえ、このような風潮に眉をひそめるオールドスクールなファンも中にはいるかもしれない。ベンチはともかく、守備中にフィールド上でスマートフォンを取り出すのはさすがに少々やりすぎか。ただ、オールスター限定の自由なスタイルは、ベースボールの魅力を若い層にアピールする1つの形と捉えることもできる。賛否両論あれど、来季以降、“新時代の球宴”でどんな斬新なセルフィーが生まれるかも見どころの1つになっていくのかもしれない。

地元スターがファンを沸かせる

 今回のオールスター期間中を通じて最大の歓声を浴びたのはブライス・ハーパー(ナショナルズ)とマチャドだった。ワシントンDC&メリーランドエリアの地元選手なのだから当然といえば当然。加えてハーパーは今季終了後にFAになり、マチャドはトレード期限の放出候補という状況が2人への興味に拍車をかけた。

 プレッシャーもあったか、本戦ではともに2打数無安打。しかし、前日のホームランダービーではハーパーが千両役者ぶりを見せつけた。

 ハーパーとカイル・シュワーバー(カブス)と争った決勝では、先にシュワーバーが18本を放った時点では勝負ありかと思えた。しかし、ジャーニーの「Don't stop believing」が流れる中で打席に登場した地元のヒーローは、「レッツゴー・ハーパー!」の大コールが飛び交う中で大飛球を連発。ラスト1分で9本の柵越えを放ってタイに追いつくと、最後はボーナスタイムに1本を追加して劇的な優勝を決めた。

「ファンの歓声は素晴らしかった。僕が子供のようになったのを見たはずだ。みんなとこの瞬間を共有できて幸運だよ」

 勝利決定後には派手なガッツポーズを繰り返したハーパーは、会見ではほとんど感極まっているようにすら見えた。今季終了後の移籍も有力視されるスーパースターは、ドラマチックなハイライトを生み出し、今オールスターの“非公式ホスト”の役割を見事に果たしてみせたのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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