ロッテ渡邉啓太、願うはチームの勝利のみ 「大事な試合を任される選手になりたい」
緊張の初登板初先発を乗り越えて
5月17日、プロ初登板初先発のマウンドに立った渡邉 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
渡邉が後続を無失点で打ち取った瞬間、井口資仁監督は称えるように手をたたき、同じ緊張を味わった選手たちもたちまち笑顔になった。球場全体に重く充満していたものは一斉に夕空へと立ち消えた。
「すごく緊張したことは覚えています。最初は自分らしくない、あたふたした感じがあったけれど、(周りの選手が)“大丈夫だ。どんどんやっていけ”と言ってくださったので、気持ちが吹っ切れて楽に投げられました。(マリーンズファンの応援は)すごいですね。実際にマウンドに立って感じる迫力が、とても力になりました」
意外なほどに周りの声は素直に耳に入った。初めて受けた大歓声にも驚かされた。試合は敗れたが、プロ初登板は5回8安打3失点。1軍のマウンドの感触、対峙する強打者、背に受ける声。すべての要素が重なったとき、渡邉は自分がスタートラインに立ったことを実感したのだった。
自分の白星より大切なもの
ピンチの場面で中村(写真右)、鈴木(中央)らから声を掛けられる渡邉 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
「自分に勝ちが付くかどうかよりも、チームの勝利が一番。5回で交代してしまうことが多かったので、もう少し投げられていれば後続の投手の負担も減らすことができました。試合の流れは先発が作るものだと思うので、きちんと勢いをつけられる投球にこだわりたいです。いい投球をしてチームが勝利した上で、自分にも勝ちがついてくれたらラッキーだという気持ちですね」
チームのために――。心からそう思うのに時間はかからなかった。入団して間もない頃から、中村奨吾や鈴木大地、NTT東日本の先輩でもある清田育宏らが明るく接してくれた。初の1軍昇格のときは、緊張の中で年齢が近い有吉優樹が気にかけてくれた。実績ある涌井秀章や石川歩は同じ先発投手としてアドバイスをくれたし、新人の渡邉が自ら質問できる空気も作ってくれている。マリーンズは、選手も裏方も、投手も野手も関係ない。良き先輩たちとの出会いに感謝するからこそ、必ず貢献すると決めている。
「皆さんのいいところを盗みたいと思っています。例えば涌井さんだったら、多くの変化球を扱っていて、なおかつ長く活躍されているのでメンタル面についても聞きたいですし、石川さんはストレートのキレや、カーブもすごい。いろんな人を見て、うまく自分のものにできたらと思っています」