ロッテ渡邉啓太、願うはチームの勝利のみ 「大事な試合を任される選手になりたい」

千葉ロッテマリーンズ

1軍で奮闘する同期の存在

新人合同合宿で笑顔を見せる菅野、藤岡裕、渡邉、山本のルーキー達(写真右から) 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 さらに特別なのは、同期入団の藤岡裕大と菅野剛士の存在だ。2017年には侍JAPANの社会人代表チームに3人そろって選出され、マリーンズの2軍との対戦でロッテ浦和球場を訪れたこともあった。同じ社会人からプロ入りを果たした野手の二人は、開幕1軍スタメンを勝ち取り、プロの世界で信頼を得ようと奮闘している。

「ポジションが違うのでライバル視や嫉妬はないですけど、二人が頑張っているから次は自分が頑張ろう、という特別な気持ちが僕の中ではあります」

 昨年のドラフト会議当日、渡邉は所属するNTT東日本の本社でその時を待った。「プロに行きたい気持ちはあったけれど、まさか行けるとは思っていなかった」という状態で、上位指名有力選手の会見場とは別の小さな個室で、携帯に映る生中継を見つめていた。

「あまり期待してダメだと落ち込むので、ダメでも来年頑張ろうと思いながら待ちました」と振り返るように、緊張はほとんど無かったし、緊張するほど大きな期待もしていなかった。だからなおさら、5位で自分の名前が呼ばれたときはすぐに受け入れることができず、「あ、僕が……と、不思議な感じでした。うれしいけれど、本当なのかな、聞き間違いじゃないかな? と思いました」と、実感するまでに少し時間がかかった。

 しばらくして、同じくマリーンズから指名を受けた藤岡裕と菅野と連絡をとった。その後、トヨタ自動車と対戦したときには藤岡裕と直接顔を合わせ、「(来年から)同じチームだな」と喜び合ったのだった。

1軍を見据え「明確な課題が見つかった」

再び1軍のマウンドに立ち、勝利に貢献できることを目指して調整する渡邉 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 7月、猛暑の2軍球場で大粒の汗を拭いながら渡邉は話す。

「1軍で活躍する打者は威圧感がありますし、常に勝負をしなければならないプレッシャーも感じました。2軍では、最低7回ぐらいまで投げて、打たせる球なのか空振りを取る球なのか、しっかり投げ分けることを意識して取り組んでいます。1軍を経験させていただいたことで明確な課題が見つかって、やるべきことが現時点ではできていると思います」

 プロ初先発のあの日、マウンドに向かう直前に井口監督から「思いきり行け」と言葉をもらったことが胸に刻まれている。シンプルだが忘れてはならないことだ。

「自分のスタイルで勝負することは大事だと常に思っています。最初からしっかりと、自分の投球で入っていかなければいけないですね。変化球を細かくしっかりコントロールして、打たせて取るスタイルを貫いて、さらにそこにストレートがあるように、総合力で勝負したいです。1軍のローテーションに入ることを近い目標に、大事な試合を任される選手になっていきたいです」

 渡邉は再び1軍のマウンドを見据える。一回り大きくなった姿で、チームの勝利に向かって力投を披露する。その背中を、ZOZOマリンスタジアムに訪れる人々は力の限り後押ししてくれるだろう。大声援は、チームの勝利のために。願わくは、チームの勝利を最も喜ぶであろう彼が、ウイニングボールを手にできるように。

長谷川美帆(千葉ロッテマリーンズオフィシャルライター)

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