常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018

大阪桐蔭投手陣を支える正捕手の思考 小泉航平が常に危機感を持たせる理由

沢井史

入学時の目標達成も心底喜べず…

柿木、横川、根尾ら大阪桐蔭の豪華投手陣をリードする小泉 【写真は共同】

【常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018:第3回】

 現チームの正捕手・小泉航平が大阪桐蔭の門を叩くにあたり、志したことがある。

“大阪桐蔭で背番号2をつけて甲子園で優勝する”

 その目標は、この春見事に達成できた。しかも前年の優勝から2連覇だ。だが、小泉の中では心底から喜びに浸れなかった。

「自分のプレーに関してはまだまだだったので……。ここは点をやってはいけないという場面で点を与えてしまって、こうしておけば良かったとか、こうすれば違っていたんじゃないかという思いが強いです。(準決勝の)三重戦では、何とか1点で、という場面で追加点を与えてしまった(3回に3連打で2点)ことが悔しかったですね。決勝戦(智弁和歌山戦)の(4回に)東妻(純平)君に打たれたタイムリーも。次の打者が投手だったので出して(歩かせて)もOKだったんですけれど、この打者で打ち取りたいという思いもあったので、勝負したら打たれました」

それぞれの性格に合わせての声掛け

 センバツでは4人の投手が登板したが、うち根尾昂、柿木蓮、横川凱は昨年からマウンドに立ち、普段の練習からボールを受け続けてきた小泉。それぞれの性格が違い、ルーティンや乗せ方もそれぞれ。個々の能力をうまく引き出すのが捕手の務めでもあるが、口で言っても実際に行動に移すのは難しい。

 声を掛けるのに最も気を配るのは、この春の大阪大会、近畿大会でエース番号をつけた横川だ。横川は見たままのマジメな性格が故にあれこれ考えすぎる面があり、ブルペンで調子が悪くても試合ではいいのはしょっちゅうなのだという。その点、センバツではエース番号をつけた柿木に対しては、こんな答えが返ってきた。

「もともと繊細な性格である柿木は、細かい部分を気にするタイプなんです。抜けたらどうしようとか当てたらイヤだという不安があるのか、こちらが出したサインには頷いても、投げ終えて少し苦い表情を見せる時があります。練習でもそうです。柿木はその日の調子によってピッチングの流れを変えますけど、根尾はどんな状況でも同じです。根尾はマジメですけれど、ピッチングにもそのまま出ます。立ち投げの時からこの方向へ何球、座ったら何球、変化球の数も決めて投げます」

 小泉は初めて根尾とキャッチボールをした時のことも今でも覚えている。とにかくボールが速い。1年の初めは内野手用グラブでキャッチボールをしていたが、根尾と組むと1週間でグラブの紐が切れた。今までにない経験だった。 

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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